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「体にいい」はずの食事で、調子が悪くなる人がいる理由

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約7分で読めます 健康・メンタル
目次

同じ食パンを食べても、血糖値の上がり方は人によって5倍以上違いました。800人に血糖値の連続測定器をつけた研究の結果です。

たとえば、朝はヨーグルトにりんご、昼は全粒粉パンと豆のサラダ、夜は玉ねぎをたっぷり入れた味噌汁。どれも「体にいい」とされる食事なのに、午後になるとお腹が張って重い。そんな経験があるかもしれません。

ネットで調べると、「食べ合わせが悪い」という説明によく出会います。消化の速いものと遅いものを一緒に食べると、腸で渋滞して腐る、という話です。

この説明は、体の仕組みとも試験の結果とも合いません。手がかりは、冒頭の「5倍」のほうにあります。

胃は、食べたものを混ぜてから少しずつ送り出す

食べ合わせ理論の前提は、消化の速い食べ物と遅い食べ物が、別々の速さで腸を進むというものです。実際の消化は、そういう順番では進みません。

『一生役立つ きちんとわかる栄養学』で飯田薫子さんが整理しているとおり、食べ物は胃のぜん動運動と胃液でどろどろにされ、十二指腸、小腸へと順に送られます。

胃の働きを整理したGoyal氏らの総説(2019年)によれば、固形物は2〜3ミリ以下の粒になるまで砕かれてから胃を出ます。胃が送り出すのは、平均で1分あたり1〜4キロカロリー分ほどです。

果物と肉を一緒に食べれば、両者は胃の中で混ざり、まとめて少しずつ小腸へ進みます。果物だけが肉の後ろで立ち往生する場所はありません。脂質の多い食事は胃から出るのが遅くなりますが、それは食事全体に起きることです。

腸内細菌が食べ物を分解してガスを出す発酵は、主に大腸で毎日起きています。食物繊維のように小腸で吸収されないものが大腸に届けば、何と一緒に食べたかに関係なく発酵します。

分けて食べる効果を確かめた試験もあります。Golay氏らは2000年、肥満の入院患者54人を、食べ合わせ理論に沿った食事と普通のバランス食に振り分け、どちらも1日1,100キロカロリーで6週間続けました。

体重の減少は6.2キロと7.5キロで、統計的な差はありませんでした。この試験が測ったのは体重と代謝で、お腹の張りは対象外です。それでも、分けて食べること自体に特別な効果は見つかりませんでした。

むしろ、一緒に食べたほうが得をする組み合わせもあります。同じ栄養学の本は、植物性食品の鉄はビタミンCや動物性たんぱく質と一緒にとると吸収されやすいと説明しています。米国立衛生研究所(NIH)の栄養補助食品局も同じ立場です。

同じパンで、血糖値の上がり方は人によって5倍以上違った

食べ合わせでないなら、何が違うのか。有力な答えの一つは、同じ食べ物への体の反応が人によって大きく違うことです。

イスラエルのワイツマン科学研究所のZeevi氏らは2015年、糖尿病と診断されていない18〜70歳の800人に、血糖値を5分ごとに記録する機器を1週間つけてもらいました。記録した食事は4万6,898食。全員に同じ条件の食パンも食べてもらっています。

食パンを食べた後の血糖値の上がり方を比べると、下位10%の人は平均15未満、上位10%の人は79を超えていました(食後の血糖上昇を面積で表した値で、単位はmg/dl×時)。どの食事で最も血糖値が上がるかも人によって違い、2つの食事で反応が逆転する人もいました。

イギリスのPREDICT 1研究(Berry氏ら、2020年)も、双子を含む1,002人で同じ食事への反応を調べました。ばらつきの大きさ(標準偏差を平均で割った値)は、血糖値で68%、中性脂肪で103%。遺伝子の違いで予測できた部分は、血糖値で9.5%にとどまりました。

血糖値はお腹の張りとは別の指標です。それでも、「同じものを食べても、体の反応は同じにならない」ことを数字で見せてくれます。

ただし、話はここで終わりません。NIHのHengist氏らが2024年に発表した研究(掲載号は2025年)では、入院環境で30人に同じ食事を約1週間あけて2回出したところ、同じ人でも血糖値の反応がかなりぶれました。1回ずつの測定では、人による違いと日による違いを見分けにくいという指摘もあり、個人差がどこまで大きいのかはまだ議論が続いています。一度の測定で「この食べ物は自分に合わない」と決めるのは早い、ということになります。

お腹の張りは、ガスの量より腸の感じ方で決まる

お腹の張りについては、もう一つ具体的な候補があります。FODMAP(フォドマップ)と呼ばれる、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい糖質のグループです。

オーストラリアのモナシュ大学がまとめた食品リストでは、りんご、梨、玉ねぎ、にんにく、小麦のパン、豆類、牛乳、ヨーグルト、はちみつなどが、FODMAPの多い食品に入っています。冒頭の献立は、ほとんどがこの仲間でした。

同大学のHalmos氏らは2014年、過敏性腸症候群(IBS)の患者30人と健康な8人に、FODMAPを抑えた食事と一般的なオーストラリアの食事を、それぞれ21日間食べてもらいました。

患者の症状は、100ミリの目盛りで44.9から22.8に下がり、張り、腹痛、おならも減りました。一方、健康な人の症状はどちらの食事でもほとんど出ず、変化もありませんでした。

同じ食事で、症状が出る人と出ない人がいる。この差をMRIで調べたのが、英ノッティンガム大学のMajor氏ら(2017年)です。IBSの患者29人と健康な29人に、果糖や、イヌリンという食物繊維を40グラム溶かした飲み物を飲んでもらいました。

腸内のガスや水分の増え方は、患者も健康な人もほぼ同じでした。違ったのは症状の出方です。著者らは、ガスが多すぎることより、腸が膨らむことへの感じやすさが症状を生んでいると結論づけています。

乳製品にも個人差があります。平島徹朗さんは『たんぱく質と腸の新常識』で、乳糖を分解する酵素が少ない体質の人には、牛乳やヨーグルトがお腹の不調のもとになりうると指摘しています。

NIHの消化器病研究所の説明はもう少し細かく、乳糖不耐症の人でも耐えられる量は人それぞれで、牛乳コップ1杯分なら症状が出ないか軽い人が多いとしています。食事と一緒に飲むほうが楽な人もいるそうです。

注意点もあります。低FODMAP食の効果が確かめられてきたのは、IBSの患者です。13の試験をまとめた2022年の解析でも最も効果の高い食事療法とされましたが、多くは専門医療機関での試験でした。

モナシュ大学も、制限は2〜6週間にとどめ、そのあと一つずつ戻して自分が耐えられるものを探す手順をとり、栄養士と進めるよう勧めています。健康な人が一生避け続ける食事として作られたものではありません。

ルールを覚えるより、自分の体で小さく確かめる

ここまでの研究をつなげると、「体にいいのに調子が悪い」の見え方が変わります。疑うべきは組み合わせの規則より、その食べ物とあなたの体の相性です。

モリー・マルーフ氏は『脳と身体を最適化せよ!』で、専門家が体に良いと言った食品が、あなたの体にも良いとは限らず、自分に合う食べ物を見つけるには検証が要ると書いています。同書は、疑わしい食品を一定期間抜いてから戻し、反応を見る方法も紹介しています。

ただ、Hengist氏らの研究が示すとおり、体の反応は日によってもぶれます。確かめ方には少し工夫が要ります。

誤解:ネットの食べ合わせルールを覚えて守る → 規則が増えるほど食事は窮屈になり、栄養も偏りやすくなります。そのうえ、ここまで見たとおり裏付けがありません。

正しいアプローチ:2週間、食べたものと症状を記録する → 時刻、食べたもの、おおよその量、数時間後のお腹の具合をメモします。1回の不調では決めず、同じ食品のあとに繰り返し出るかを見ます。今日の夕食から始められます。

疑わしい食品は、一度に一つだけ、量を変えて試す → たとえば牛乳なら、コップ半分の日と1杯の日で比べます。何品もまとめて抜くと、どれが原因だったのか分からなくなります。

体重が減ってきた、便に血が混じる、夜中に腹痛で目が覚める、といった症状があるときや、不調が何週間も続くときは、食事の実験より先に消化器内科で相談してください。似た症状の病気がないかを確かめてもらうだけでも、意味があります。

おわりに

「体にいい」という言葉が表しているのは、たくさんの人を平均したときの傾向です。平均としては正しくても、あなたの腸がその平均どおりに反応するとは限りません。

次にお腹が張ったら、食べ合わせの表を探す前に、何を食べたかを1行メモしてみてください。2週間分たまるころには、一般論からは見えない、あなたの体の傾向が見えてきます。


この記事で参考にした本

『一生役立つ きちんとわかる栄養学』飯田薫子 → 口から大腸までの消化と吸収の流れ、鉄とビタミンCのように一緒にとると吸収がよくなる組み合わせ

『脳と身体を最適化せよ!』モリー・マルーフ → 「体に良い」とされる食品でも自分に合うとは限らず、除去と再開で確かめるという考え方

『たんぱく質と腸の新常識』平島徹朗 → 乳糖を分解しにくい体質の人には、牛乳やヨーグルトが不調のもとになりうるという指摘


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「体にいい成分」を探すほど、健康から遠ざかる 健康情報の根拠には強さの段階がある、という話です。食べ合わせの説のような情報を見分けるときの物差しになります。

「気にしすぎ」は性格ではなく、神経の仕様だった 同じ刺激でも、感じ方の強さは人によって違います。腸の感じやすさの話と並べて読むと、「自分だけつらい」の理由が見えやすくなります。