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ブクドリ | BOOK DRIP

「気にしすぎ」は性格ではなく、神経の仕様だった

約4分で読めます 健康・メンタル
目次

同じ会議に出て、同じ時間働いて、なぜか自分だけ疲れている。

そういう人に向けて、心理カウンセラーの武田友紀さんは『繊細さんの本』でこう説明しています。繊細さは克服すべき性格の課題ではなく、生まれ持った気質だ、と。

HSP、Highly Sensitive Personと呼ばれる気質です。エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念で、5人に1人の割合で存在するとされています。

脳の神経システムが刺激に反応しやすい。だから、他の人が気づかない小さな変化や感情を拾ってしまう。

性格ではなく、仕様の話でした。

「鈍感になろう」は、解決策になっていない

疲れやすい人がよく言われるのが、鈍感力を持てというアドバイスです。

武田さんは、これを真っ向から否定します。繊細な人が鈍感になろうとすることは、自分自身を否定することであり、そもそも不可能だ、と。

理由は単純で、感じる能力のスイッチは切れないからです。目がいい人に「見えないふりをしろ」と言うようなものです。

代わりに武田さんが勧めるのは、繊細さをコンパスとして使うことです。感じ取ってしまうなら、その感覚を「合う環境かどうか」の判定に使う。

たとえば、オープンフロアの職場で消耗している人。これは我慢が足りないのではなく、刺激の量が合っていないという情報です。

対処も物理的なもので構いません。武田さんが挙げるワザに、メガネの度を少し落とすというものがあります。視覚情報を減らすためです。イヤホンで音を遮る、席を変える。精神論より、こちらのほうが効きます。

もうひとつ、視点の転換があります。配慮のない相手に「なんであんなことができるの」と憤るのではなく、「相手には、私が感じているものが感じられていない」と捉える。

悪意ではなく、神経システムの違い。そう見ると、腹の立ち方が変わります。

疲れているのは、体ではなく頭

仕事の疲れについて、武田さんは面白い整理をしています。消耗しているのは体ではなく頭だ、と。

特にマルチタスクです。同時に複数のことを求められると、繊細な人は全部を感じ取ってしまう。それぞれの進捗、周囲の様子、優先順位の葛藤。

対処として挙げられているのは、拍子抜けするほどシンプルなものです。「一つひとつやっていこう」と自分に言う。

そして、マイルールを作る。葛藤で疲れるなら、判断そのものを減らす。

たとえば、返信は午前と夕方の2回だけと決めておく。決めた時点で、「今返すべきか」という葛藤が消えます。判断のたびに使っていたエネルギーが、そのまま残ります。

人間関係でも同じです。武田さんが勧めるのは、境界線を物理的にイメージする方法です。ガツガツした人と話すときは、相手をテレビ画面の向こうの人だと思う。あるいは、自分と相手の間に分厚い透明なアクリル板をおろす。

こじつけのようですが、実際に距離感が変わるという話が出てきます。

自律神経の観点からも、無理をしないことには理由があります。矢作直樹さんは『自分を休ませる練習』で、頑張ることをやめたところから体が戻り始めた事例を紹介しています。休息は、余裕がある人の贅沢ではありません。

「感じてしまう」は、消せないが減らせる

ここまでの話をまとめると、方向は2つです。

刺激を減らす。判断を減らす。

どちらも、自分を変えようとしていません。環境と手続きを変えています。

これは、繊細さを持たない人にも使えます。武田さんの本は当事者向けですが、書かれているのは刺激と認知の管理で、程度の差はあれ誰にでも当てはまるからです。

ただ、注意も要ります。HSPは医学的な診断名ではありません。気質を説明する概念です。

だから「自分はHSPだから」で説明を終えると、別の原因を見落とすことがあります。強い疲労感や気分の落ち込みが続いているなら、貧血や甲状腺の問題、うつなど、医療の対象になるものもあります。

気質の話と、体調の話は分けたほうが安全です。

明日からできること

誤解:疲れやすいのは、心が弱いからだ → 刺激を拾う量が違えば、同じ環境でも消耗量は変わります。強さの問題ではなく、入力量の問題です。

正しいアプローチ:判断の回数を、ルールで減らす → メールの返信時間、会議に出る基準、飲み会に行く条件。あらかじめ決めておくと、そのつど迷うエネルギーがなくなります。

もうひとつ、今日からできることがあります。

自分がいちばん消耗する場面を1つ思い出して、そこにどんな刺激があったかを書き出す。音、視線、人数、明るさ、話す速度。

書き出すと、変えられるものが1つは見つかります。席を移す。ノイズキャンセリングを使う。休憩を挟む。

我慢の量を増やすより、入ってくる量を減らすほうが早いです。

おわりに

「気にしすぎだよ」と言われて、うまく反論できなかった経験は多いと思います。

でも、気にしているのではなく、気づいてしまっている。ここが分かると、対策の場所が自分の内側から環境の側に移ります。

直すべきは、感じ方ではなく置かれ方でした。


この記事で参考にした本

『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 繊細さんの本』武田友紀 → HSPを気質として捉え直し、鈍感になるのではなく環境を選ぶという方針を示した一冊。物理的な対処法が具体的。

『自分を休ませる練習』矢作直樹 → 頑張ることをやめたところから体が戻り始めるという視点。休息を後回しにしない理由がわかる。


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