自信があるときほど間違えるのは、「答え合わせ」をしていないから
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米国企業の財務責任者に「来年の株価指数はこの範囲に収まる」と80%の自信で答えてもらうと、実際に収まったのは36%でした。
デューク大学の研究チームは、2001年6月から2011年3月まで40回の四半期調査で、主にCFO(最高財務責任者)にS&P500の1年後のリターンを予想してもらいました。「10%の確率でこれを下回る」「10%の確率でこれを上回る」という2つの値を聞き、その間を80%の範囲とみなします。集まった予想は1万3,300件を超えます。
自信の強さが正確なら、10回に8回は範囲に入るはずです。結果は10回に4回弱でした。回答者の範囲の幅は平均14.5ポイント。過去の実績から見た同じ範囲は42.2ポイントで、それより広く答えた人は3.4%しかいませんでした(ベン=デイビッド氏ら、2013年)。
企業の財務を預かる、数字に強い人たちです。足りなかったのは、「自分の予想がどれくらい当たるか」の感覚でした。自信の強さと実際の的中率がどれだけ一致しているかを、判断研究ではキャリブレーション(較正)と呼びます。そしてこのズレは、どこでも同じ大きさではありません。
「100倍確実」と答えた問題の正答率は73%だった
自信と的中率のズレを古くから測ってきたのが、米国オレゴン州の研究グループです。
フィッシュホフ氏らが1977年に報告した実験では、大学生66人に、41の死因から作った2択を解いてもらいました。たとえば「脳卒中」と「事故全般」では、米国で年間の死者が多いのはどちらか、という形です。そのうえで、自分の答えが正しい見込みを「100対1」のようなオッズで書いてもらいます。
オッズが3対1(的中率75%に相当)くらいまでは、自信と正答率はおおむね一致していました。そこから先は、自信だけが上がります。「100対1」とした答えの正答率は73%、「100万対1」以上でも90%でした。しかも回答の半分は、50対1より強い自信で出されていました。
別の論文では、「90%確実」とした答えの正答率がおよそ75%という典型例がまとめられています(コリアット氏ら、1980年)。
ただし、これを「人間はいつも自信過剰だ」と読むのは早すぎます。こうしたクイズは、研究者が「差がつきそうな問題」を選んで作っていました。ユスリン氏は1994年、問題を自然な集団から無作為に選ぶと、2択クイズの自信過剰は小さくなるか消えると報告しています。
「難しい問題ほど自信過剰になり、易しい問題では自信不足になる」という有名な傾向も、平均への回帰や目盛りの端の効果といった統計上の見かけを補正すると、ほとんど消えるという再分析があります(ユスリン氏ら、2000年)。
一方で、補正しても消えにくい形があります。冒頭のCFOのように、自分で「この範囲に入る」と幅を答える形式です。同じ知識を使っても、2択の確率を答える形では自信がほぼ現実的なのに、幅を作らせると極端に狭くなる。ユスリン氏らが1999年の実験で確かめた結果です。
仕事でいえば、見積もりの「長くても5日」や、売上予測の「悪くても800万円」がこれにあたります。目盛りを最も外しやすいのは、幅を自分で書くときです。
ズレが小さい職業には、毎日の答え合わせがある
自信と的中率がよく一致する職業として、判断研究でたびたび引かれるのが米国の気象予報士です。マーフィー氏とウィンクラー氏は1977年、降水や気温を確率で出す予報を分析し、予報士の確率は信頼できる水準で現実と一致していると報告しました。
信頼できる、というのは、たとえば「30%」と出した日を集めると雨の日がおよそ3割になる、という意味の一致です。
対照的なのが、外来の医師が肺炎の見込みを答えた研究です(クリステンセン=シャランスキー氏とブッシュヘッド氏、1981年)。医師たちは、患者が肺炎である確率を過大に見積もっていました。その一方で、どの症状が肺炎の手がかりとして強いかという相対的な違いには敏感でした。
医師は、患者を「より肺炎らしい順」に並べる力は持っていたわけです。ずれていたのは、それを何%と言い表す目盛りのほうでした。
この差についてよく示される説明は、答え合わせの量と速さです。予報士は毎日数字を出し、翌日には結果が出ます。数字と結果が大量にたまり、確率ごとに照らし合わせられます。医師は結果を知ることはあっても、「自分が70%と言った患者のうち何人が肺炎だったか」を数える機会はほとんどありません。
結果を知るだけでは足りない、という話もあります。ダニエル・カーネマン氏は『ファスト&スロー』で、若いころにイスラエル軍で士官候補生を評価した経験を書いています。障害物を越える集団課題を観察してリーダーの資質を予測しても、士官学校での実際の成績と比べると、当て推量よりわずかにましな程度でした。
それを知ったあとも、次の候補者を前にすると、同じように自信を持って予測していた。カーネマン氏はこれを「妥当性の錯覚」と呼んでいます。私の読みでは、成績の集計は候補者全体についての事実として届き、目の前の一人に抱く確信とは結びつかなかったのでしょう。
経験を積んでも、自信の目盛りは勝手には合いません。冒頭のCFOも、財務の専門家でした。
自信の目盛りは、数字にして照らし合わせると直る
目盛りは直せます。リヒテンシュタイン氏とフィッシュホフ氏は1980年、1回200問の確率判断を11回行い、毎回くわしいフィードバックを返す訓練を報告しました。目盛りは大きく改善し、その改善のほとんどは最初のフィードバックの直後に起きていました。
ただ、訓練の効果は、内容の違う課題にはあまり移りませんでした。一度の答え合わせで目盛りは動きますが、分野ごとに合わせ直す必要があります。
確信の作られ方に手を入れる方法もあります。コリアット氏らの1980年の実験では、大学生200人に2択問題を答えてもらったあと、理由を1つ書かせました。自分の答えを支える理由を書いた群では、自信の過剰は減りません。自分の答えが間違っているかもしれない理由を書いた群だけ、自信が的中率に近づきました。
研究者の解釈では、人は選んだ答えを支える証拠を中心に自信を組み立てます。反対の理由を1つ出すと、その偏りが少し戻る。ただし改善は、すべての理由を書き出させた最初の実験ほど大きくはなく、支持と反対を1つずつ書く条件では改善しませんでした。
照らし合わせるときに気をつけたいのは、1回の結果で判断しないことです。ポーカーの世界王者、木原直哉氏は『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』で、運が結果に与える影響は参加回数の平方根に比例すると話しています。回数を重ねるほど、結果に占める運の割合は小さくなっていきます。そのうえで「結果論にこだわりすぎるとロジックが身につかない」と言います。
70%と見込んだことが外れても、それだけでは見込みが間違っていたとは言えません。10回のうち3回外れるのが70%です。目盛りを確かめられるのは、同じ強さの自信を何件も集めて数えたときだけです。
「自信がある」を数字で書き、10件ためてから数える
ここまでの研究を、日々の判断に置き換えます。
誤解:自信は「ある」「ない」で言えば伝わる → 言葉のままでは答え合わせができません。たとえば「先方は来週中に承諾する:70%」「この機能は月末に間に合う:90%」のように、予想と数字と結果が分かる日付を1行で書きます。今日の予想を3つ書くだけなら、5分で始められます。
誤解:外れたら、その1件を反省すればいい → 1件では運と見分けられません。10〜20件たまったら、「70%」「90%」と書いたものを帯ごとに集め、実際に当たった割合を数えます。「90%」のうち7割しか当たっていなければ、その分野での自分の「90%」は「70%」くらいだと分かります。
誤解:見積もりの幅は、狭いほど頼もしい → 幅を自分で書くときが、いちばん目盛りを外しやすい場面です。「80%この範囲」と書いたら、外れるとしたらなぜかを1つ書き、その理由が起きた場合まで範囲を広げます。CFOたちの範囲は、過去の実績の3分の1ほどの幅しかありませんでした。
気象予報士がしているのは、数字で言い、結果を待ち、数えることの繰り返しです。それが仕事の仕組みに最初から組み込まれています。
おわりに
自信があるときほど間違えるのは、自信の目盛りが一度も答え合わせされていないからです。自信を消す必要はありません。
次に「これは間違いない」と感じたら、それが何%の「間違いない」なのかを書いておく。数か月後、その数字の束が、あなたの自信の読み方を教えてくれます。
この記事で参考にした本
『ファスト&スロー(上)』ダニエル・カーネマン氏 → 予測が当たらないと知っても自信が揺るがなかった、士官候補生評価の「妥当性の錯覚」
『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』エミン・ユルマズ氏、木原直哉氏 → 1回の勝ち負けで判断せず、回数を重ねてプロセスを評価するというポーカーの考え方
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