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『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』井上皓史さん|頑張るのは「起きる」じゃなくて「寝る」

生産性・時間術・習慣 ✍ 井上皓史さん
約9分で読めます

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『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』
目次

毎朝5時に起きようと決意して、3日でやめた。そんな経験、ありませんか。

私もそうでした。気合で目覚ましを5個セットして、結局スヌーズの連打で二度寝。自分は意志が弱い人間なんだと、勝手に落ち込んでいました。早起き本を何冊か読んでは「明日からやるぞ」と意気込み、そのたびに同じところで転ぶ。原因がわからないまま、ただ自分の根性のなさを責めていたのです。

でも本書を読んで、考え方がひっくり返りました。著者の井上皓史さんが置く前提は、ひとことで言えば「がんばる場所を間違えている」というものです。

頑張らなければならないのは「毎朝5時に起きること」ではなく「毎晩22時に寝ること」。起きる努力ではなく、寝る努力。

この視点の転換が、早起きを「根性」から「仕組み」へと組み替えていきます。井上さんは朝活コミュニティ「朝渋」を運営し、自身は「5時こーじ」と呼ばれる早起きの実践者。

本書はその経験から生まれた、徹夜も気合も推奨しない、現実の会社員のための早起き術です。

図解

「起きる」を頑張る人がつまずく理由

本書を読んで一番ハッとしたのは、早起きそのものを目標にしてはいけない、という指摘でした。

早起きそのものは目的ではありません。何かの目的を実現するための手段として、早起きがあると私は考えています。(井上皓史『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』)

これは言われてみれば当たり前なのに、挫折のど真ん中を突いています。早起きを目的化すると、せっかく起きてもやることがなくて二度寝する。私が3日で脱落していたのも、まさにこれでした。

「5時に起きる」ことだけを目標にしてしまい、起きた後の朝の時間に何を入れるかを一切考えていなかった。だから起きた瞬間に手持ち無沙汰になり、布団の暖かさに負けるわけです。

「起きてから何をするか」が先で、起きるのは後。順番が完全に逆だったのだと、本書を読んで初めて腑に落ちました。

井上さんはこの先に「自分の時間軸で生きる」というキーワードを置きます。これは「自分で自分の時間をコントロールして生きる」ということ。残業、上司の顔色、惰性の飲み会といった他人の都合に時間を明け渡している状態——本書の言葉で言う「他人の時間軸」——から抜け出し、朝の数時間を自分のために取り戻す。

早起きはそのための手段にすぎない、という整理です。この「手段にすぎない」という割り切りが、本書全体の背骨になっています。

ここで具体的に効いてくるのが、起床後の2時間を指す「ゴールデンタイム」という概念です。寝起きの頭は雑念が少なく、誰にも邪魔されない。ここに優先順位の高い仕事や勉強を入れると生産性が跳ね上がる、という主張には実感が伴います。

井上さん自身、新卒で入ったIT企業で夜型生活に体調を崩したとき、上司に「2時間早く出社するから2時間早く帰らせてほしい」と直談判し、結果的に仕事への集中も売上も評価も上がったというエピソードを紹介しています。

転職先のITベンチャーでは、その働きぶりに社長が気づき、会社の始業時刻まで早まったとか。一人の早起きが組織の働き方を動かしたという話は、やや出来すぎにも聞こえますが、朝の時間が持つ力を象徴するエピソードとして印象に残りました。

頑張るのは「起きる」じゃなくて「寝る」

タイトルが示すとおり、本書の核心は就寝時刻のほうにあります。睡眠時間を削って無理に早起きしても、睡眠負債が溜まって長続きしない。だから攻めるべきは朝ではなく夜だ、という発想です。

睡眠負債とは、日々のわずかな睡眠不足が積み重なって慢性的に足りていない状態のこと。これが早起き習慣の最大の敵になります。面白いのは、いきなり早起きの方法に入らず、まず睡眠負債の返済から始めさせるところ。

週末などにたっぷり眠って借金をゼロにし、そのうえで日中に眠くならない「自分に合った睡眠時間」を探す。借金を抱えたまま適正な睡眠時間を測ろうとしても正しく測れない、という順序へのこだわりに、著者の誠実さを感じました。

世間の平均値で決めるな、という姿勢も一貫しています。OECDの2019年調査によれば日本人の平均睡眠時間は7時間22分で加盟国中最短、加盟国平均は8時間以上。

こうした数字を持ち出しておきながら、井上さんは「平均ではなく自分の体感で決めろ」と言い切ります。世の睡眠術が「最適な睡眠時間は◯時間」と一律に断言しがちなのに対し、本書はあくまで個人差を前提に置く。

ここは地味ですが、挫折しないための重要な分岐点だと思います。他人の正解をなぞろうとするから無理が出るわけで、自分の体に合う時間を実測する手間こそが、結局いちばんの近道なのでしょう。

そのうえで、適切な睡眠時間がわかったら、そこから逆算して就寝時刻を固定する。井上さんは7時間睡眠なので、5時起床のために22時就寝という計算です。

そして就寝時刻を守るために、夜の行動を「引き算」していく。やることを減らすほど、決めた時刻に寝るのが楽になるという理屈です。たとえば21時を過ぎたらスマホやテレビなどの電子デバイスに触れない、間接照明にして脳をリラックスさせる、といった具体策が並びます。

逆に言えば、私たちが夜ふかししてしまうのは「夜にやることを足し続けている」からで、引き算の発想がそもそも欠けていた。ここは耳が痛い人が多いはずです。

具体的な夜の整え方や時間配分は人によって最適解が違う部分でもあるので、ぜひ本書で自分の生活に当てはめながら確かめてほしいところです。

通勤電車を「動く書斎」に変える

朝型になると、これまで死んでいた時間が生き返ります。井上さんが通勤時間を「動く書斎」と呼ぶくだりは、本書のなかでも特に実用的でした。片道1時間の通勤なら、往復2時間を使って相当なことができる、という主張です。

片道1時間を年間240日続けると、通勤時間は年480時間。1日8時間労働に換算すれば、なんと60日分の勤務時間に相当します。この時間を居眠りやスマホのスクロールに溶かすのか、読書やインプットに投じるのかで、年単位で見れば途方もない差が生まれる。

混んだ電車も、見方を変えれば座って学べる机になる、という発想の転換です。

印象的だったのは、著者の父親のエピソードです。満員電車を避けるために朝6時に家を出て、会社近くのカフェで新聞を読んでから出勤する。これを30年以上続けた結果、いつも時間に余裕があって焦らなくなり、心にゆとりが生まれたそうです。

早起きが生むのは生産性だけではない。この「余白」こそが本質なのかもしれない、と読みながら感じました。時間に追われている感覚から解放されること自体が、すでに大きな報酬なのです。

「飲み会」を否定せずに攻略する潔さ

個人的にいちばん唸ったのは、朝活の本でありながら一章まるごと「飲み会対策」に割いている点です。早起きを邪魔する最大の敵が夜の残業と付き合いだと、現実をちゃんと見ている。理想論で「飲み会は断りましょう」と片づけないところに、実践者ならではのリアリティがあります。

しかも井上さんは飲み会を全否定しません。両立の究極のコツは「ポジティブな飲み会」だけに参加することだ、というのが本書の結論です。前に進むヒントが得られる場だけ残し、愚痴大会や惰性の付き合いを手放す、という線引きです。

そのために本人が公開しているマイルールが具体的で、「20時以降に始まる会には参加しない」「参加人数は4人以内」「お酒はジョッキ2杯まで」「2次会は卒業する」といった基準が並びます。

5人以上だと会話が薄くなるから人数を絞る、という理由づけまであるので、自分のルールを作るときの土台にしやすい。

数字で見ると、その効果は一目瞭然です。1回の飲み会(約3時間)が約5千円、2次会で2〜3千円。週4回通えば年間96万円、タクシー代まで含めれば年間100万円を超える。

井上さん自身もかつては飲み会漬けだったそうですが、今は年間70回程度、1年の19%まで絞り込んだといいます。失っていたのはお金だけでなく、翌朝の時間と健康でもあった。

こうして可視化されると、自分の夜の過ごし方を見直さずにはいられません。

連続して飲み会を入れない「カレンダーブロック」という工夫も実践的でした。飲み会の予定が入った時点で、その前後の日をあらかじめスケジュール上で塞いでしまう。

2日連続の夜ふかしを物理的に防ぐ守りの技術です。意志ではなく仕組みで自分を守るという本書の一貫した姿勢が、ここにも表れています。

そして、それでも夜ふかしする日のための安全網が「シンデレラルール」です。

日によっては少々夜更かしをするのは構わないものの、遅くとも24時までには必ず就寝する(同書)

24時までに寝て翌朝は5時ではなく7時に起きる。7時間睡眠を確保したうえで、自己嫌悪に陥らずに済む特例です。ただし使いすぎると習慣が崩れるので、月2回程度が上限。

ルールを守れない自分を責めて全部投げ出す、という最悪の崩れ方を防ぐ設計です。「続けるための例外」をあらかじめ制度に組み込んでおく発想は、早起きに限らず、あらゆる習慣化に応用できると思いました。

続かないときは「自分面談」で目的に立ち返る

それでも早起きが続かないとき。井上さんは、たいてい早起きそのものが目的化してしまっていると指摘します。冒頭の話に戻ってくるわけです。そこで使うのが「自分面談」。

ノートに早起きの「原因」と「結果」を書き出し、「なぜ自分は早起きするのか」を自問自答する内省のプロセスです。いま抱えている課題は朝の2時間を使えば解決に近づけるか——そう問い、答えがイエスなら、それをそのまま早起きの目的に据えればいい、というのが井上さんの提案です。

スキル不足に悩んでいるなら、その勉強を朝に入れる。自分の課題と朝の時間を結びつけると、起きる理由が初めて生まれる。あわせて、毎日の就寝・起床時間を手帳に記録するのも有効だとされます。

記録を続けると自分の癖が見えてきて、「特定の曜日に夜ふかししがちだ」と気づければ先回りして対策が打てる。感覚ではなくデータで自分を扱うという発想は、ダイエットや家計管理にも通じる王道です。

一人だと続かない人には、コミュニティの力を借りる手もあります。家庭でも職場でもない「第3の場所(サードプレイス)」として朝活の集まりに参加し、同じ志を持つ仲間と励まし合う。意志の弱さを仲間の存在で補うという、これも仕組み化の一つです。

どんな人に効くか

本書が刺さるのは、早起きを何度も決意しては挫折してきた人、そして残業や飲み会で自分の時間がまるごと消えている会社員です。逆に、夜型で成果が出ていて変える気のない人には響かないでしょう。本書はあくまで「自分の時間を取り戻したい」という動機が前提だからです。

巻末には早起きで転職や副業を実現した人たちの事例も並びます。朝活で自分の適性に気づいてWEBディレクターへ転身し社内表彰された人、毎朝4時半起きで勉強とダイエットを両立しエンジニア転職と13キロ減量を果たした人、出勤前の独学を10か月続けて副業へつなげた人——いずれも具体的で、勇気をもらえます。

ただ気をつけたいのは、早起き自体が成功を約束するわけではないという点。彼らに共通するのは、朝の時間を「新しい自分への入り口」として使い切ったことです。

起きること自体に意味があるのではなく、空いた時間に何を入れるか。本書を貫くこのメッセージは、最後までシンプルでした。

読み終えて、早起きに対する罪悪感が消えました。続かなかったのは意志が弱いからではなく、頑張る場所を間違えていただけ。寝る側を整えれば、朝はあとからついてくる。

5時に起きる決意は、今夜少しだけ早くベッドに入るところから始まります。まずは今日、21時以降のスマホをやめて、いつもより早く布団へ。その小さな一歩の先に、井上さんが言う「無敵」の感覚が待っているのだと思います。


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『継続する技術』戸田大介さん 早起きが三日坊主で終わる人へ。200万人のデータから導いた「続ける科学」が、本書のシンデレラルールや自分面談と同じく、根性に頼らず習慣を守る発想を授けてくれます。

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