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ブクドリ | BOOK DRIP

やる気が出ないのは、目標が「証明」になっているから

約4分で読めます 健康・メンタル
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続かないとき、たいてい自分の意志を責めます。

でも社会心理学者のハイディ・グラント・ハルバーソンの研究を読むと、疑うべきはもう少し手前にあることが分かります。目標の形です。

同じ「英語を上達させる」でも、それが自分の能力を証明するための目標なのか、能力を伸ばすための目標なのかで、途中の折れやすさがまったく違う。

やる気の量ではなく、目標の種類の話でした。

「証明」の目標を持つ人は、邪魔されると崩れる

ハルバーソンは教え子のローラ・ゲレティと、こんな実験をしています。

学生の目標タイプを事前に調べたうえで、回答不能の問題を出したり、集中を妨げる状況で難しいテストを受けさせたりする。

結果は明確でした。「自分の能力を証明したい」と考える学生は、一様に成績が下がりました。一方で「これは学ぶ機会だ」と考える学生は、まったく動揺を見せず、成績も良かったのです。

差が出たのは順調なときではありません。邪魔が入ったときでした。

証明の目標を持っていると、うまくいかない出来事はすべて「能力が足りない証拠」になります。だから障害が現れた瞬間に、目標そのものが脅威に変わる。

成長の目標なら、同じ出来事が単なる材料になります。

成功を強く思い描くほど、達成から遠ざかる

もうひとつ、直感に反する話があります。

理想の未来や成功した場面を思い描くこと。これは目標達成を助けるどころか、成功確率を下げるとハルバーソンは書いています。

心理学者ガブリエル・エッティンゲンの研究が分かりやすい。肥満に悩む女性たちにダイエットプログラムへの参加を依頼し、事前に「ドーナツなどの誘惑に簡単に打ち勝てると思うか」と尋ねました。

「簡単に打ち勝てる」と答えた人たちは、「そう簡単にはいかない」と答えた人たちより、13キロも重いままでした。

ただし、悲観すればいいという話ではありません。同じ研究者が推奨するのはメンタル・コントラストという手法で、成功した場面と、そこに至るまでの障害の両方を描くやり方です。

達成できると信じつつ、簡単ではないと知っている。この2つが同時に必要でした。

やる気ではなく、条件文で決める

では障害を見つけたあと、どうするか。ここでハルバーソンが出す道具が、if-thenプランニングです。

やることを「もし〜になったら、〜する」という条件文の形で先に決めておく。それだけです。

運動を習慣にしたい人たちに「もし月・水・金曜になったら、仕事の前に1時間ジムで汗を流す」と決めさせた研究では、91%が習慣化に成功しました。普通に目標を立てただけの人は31%です。

医療の場面でも同じ結果が出ています。乳がん手術後の1カ月検診の受診率は100%(そうでない人は53%)、子宮がん検診は92%(同60%)。

行動レベルまで計画が具体的になっていると、実行される可能性は300%高まるとされています。

意志の力を使っていません。使っているのは、決める順番だけです。

明日からできること

誤解:「もう夜更かしはしない」と決めれば、変えられる → オランダのユトレヒト大学の研究では、「もうそれはしない」という否定形のプランを立てた人は、避けたい行動を以前より多く取ってしまうという逆効果が確認されています。

書き換えるなら「もし23時になったら、スマホを充電器に置いて寝室を出る」のように、やることの形にしてください。

正しいアプローチ:目標の主語を「見せる」から「できるようになる」へ変える → 「評価されるレベルの資料を作る」ではなく「今回で構成の型を1つ覚える」。同じ作業でも、後者なら失敗が情報になります。

そして人を褒めるときも、同じ構造が働きます。ハルバーソンは、能力や才能を褒めると一度つまずいたときに自己不信に陥りやすいと指摘し、褒めるべきは相手がコントロールできる行動や工夫のほうだとしています。

星渉さんの『神モチベーション』も、目標が未達成のときに原因を反省するのではなく、成長した部分を探すべきだと書いています。「やる気は出そうとすると、逆になくなる」という彼の言い方は、ハルバーソンの証明ゴールの話と同じところを指しています。

ちなみにハルバーソンの本には、自己効力感と成功の相関係数が0.34、その仕事に必要な技能のテスト結果と成功の相関係数が0.19という数字も出てきます。できると思えているかどうかは、技能そのものより成功と結びついていました。

おわりに

やる気が出ない日に必要なのは、気合を入れ直すことではないのかもしれません。

いま自分が置いている目標が、誰かに何かを証明するためのものになっていないか。それを見るほうが先です。

証明の目標は、うまくいっている間だけ機能します。そして、ずっとうまくいくことはありません。


この記事で参考にした本

『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』ハイディ・グラント・ハルバーソン → 証明ゴールと成長ゴール、メンタル・コントラスト、if-thenプランニング。目標達成を心理学の実験データで裏づけた薄くて濃い一冊。

『やる気が上がる8つのスイッチ』ハイディ・グラント・ハルバーソン → マインドセットとフォーカスのタイプ分け。自己効力感の数字や、褒め方の落とし穴が具体的。

『神モチベーション 「やる気」しだいで人生は思い通り』星渉 → やる気を出そうとするほど失われるという逆説と、結果ではなく成長を見る習慣。実務家の側から同じ結論に届いている。


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