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ブクドリ | BOOK DRIP

面接が上手い人ほど、採用で失敗する

約6分で読めます リーダーシップ・組織
目次

面接で「この人、いいな」と感じた候補者ほど、入社後に外れる。

不思議な話です。話が弾んで、印象がよくて、なんとなく気が合う。そういう人を選んだはずなのに、半年後に「思っていたのと違った」となる。

私はこれを、面接官の腕が悪いからだとは思いません。むしろ逆で、面接が上手い人ほどこの罠にはまります。相手の緊張をほぐし、話を引き出し、好感を持つ。その全部が、実は「成果を出す人か」とは別のことを測っているからです。

きょうは、面接で本当に見るべきものを、3冊の本を手がかりに整理してみます。

面接で見えるものと、成果を出すものはズレている

まず、面接という場で何が起きているかを確認します。

面接官が短時間で受け取る情報は、ほとんどが表層です。第一印象、話のうまさ、経歴の派手さ、そして「自分と話が合うか」。この4つは面接室でくっきり見えます。

でも、入社後の成果を決めるのは、そこではありません。

小野壮彦さんの『人を選ぶ技術』は、この点をはっきり指摘しています。著者は世界的なヘッドハンティングファームで5000人以上のエグゼクティブを評価してきた人です。その経験から、面接で「志望動機」や「あなたの理想のマネジメントは?」を聞くのは無意味だと言い切ります。

理由はシンプルで、それらは相手がいくらでも作れる「意見」だからです。熱意は演じられる。理想論は誰でも語れる。面接官が気持ちよく聞けた話ほど、うまく設計された可能性が高い。

小野さんの言葉を借りれば「意見は無意味。行動が全て」なんです。

ここに、面接が上手い人の落とし穴があります。話を引き出す技術が高いほど、相手の練られた自己PRを大量に集めてしまう。集めた情報が多いから、自分は深く見抜けたと錯覚する。でも中身は意見の山で、行動の事実はほとんど入っていない。

見るべきものと、見えているもの。ここが最初からズレているわけです。

知見1 表層のスキルより、深層の「再現性」と「資質」

では何を見ればいいのか。

小野さんは、人を建物にたとえます。地上階が「経験・知識・スキル」、地下1階が「コンピテンシー(行動特性)」、地下2階が「ポテンシャル(器・伸びしろ)」、地下3階が「ソース・オブ・エナジー(使命感や劣等感)」。

浅い層ほど履歴書で見えて、変わりやすい。深い層ほど見えにくくて、変わりにくい。そして将来の成果を決めるのは、地下の層です。

とくに大事なのが地下1階のコンピテンシー。これは「どんな状況で、どう動きがちか」という固有の行動パターンです。過去に本当に取った行動だから、未来にも再現される。つまり、成果の再現性がここに出ます。

たとえば「あなたはチームプレイが得意ですか」と聞けば、全員が「得意です」と答えます。これは意見なので情報になりません。そうではなく「一番苦しかったプロジェクトで、あなたは具体的に何をしましたか」と聞き、「それで?」「誰が反対したんですか?」と一段ずつ事実に潜っていく。小野さんはこれをディープ・ダイブと呼びます。

もう一つが地下2階のポテンシャルです。好奇心、洞察力、共鳴力、胆力の4つで測る「器」の大きさ。今のスキルが足りなくても、器が大きい人は化ける。ここで見るのは能力ではなく「エネルギー」で、何に対して自然と熱量が湧くかを感じ取る作業になります。

実務での示唆はこうです。経歴の華やかさ(地上階)で当たりをつけるのはいい。でも合否は、行動の事実(地下1階)と伸びしろ(地下2階)で決める。順番を逆にすると必ず外します。

知見2 バイアスを「仕組み」で外さないと、似た人ばかり集まる

二つ目は、面接官自身の話です。

人は無意識のバイアスで目が曇ります。小野さんが特に警戒するのが、ハロー効果と親近感バイアスです。

ハロー効果は、一つの目立つ特徴で全体を評価してしまう歪み。「有名企業出身だから優秀だろう」と、それ以外を見なくなる。親近感バイアスは、自分と似たタイプに好感を抱いてしまう癖です。

面接が上手い人ほど、後者が効いてきます。会話が弾む相手とは、たいてい価値観や話し方が自分に似ている。似ているから話しやすく、話しやすいから高く評価する。気づけば、自分のコピーみたいな人ばかり通してしまう。

たとえば理系出身のマネージャーが面接すると、論理的に淀みなく話す候補者を無意識に高く評価し、感情で人を動かすタイプを「なんか弱いな」と落とす。これは能力の差ではなく、面接官の好みの差です。

小野さんの処方箋は「書く」こと。面接直後に、相手の強みと弱み、そして感じた違和感を言語化する。「書けないうちは思考ではない」。頭の中の好感を、根拠のある評価に変換する作業です。

この本には「優秀で有害な人(EVIL)」という怖い話も出てきます。能力は高く実績も出すのに、共感性が欠けていて周囲を壊すタイプ。厄介なのは、彼らが面接では魅力的に見えることです。だからこそ、受付や店員への態度をこっそり見たり、前職へのリファレンスを取る。好印象を裏側から検証する手続きが要ります。

実務での示唆は明確です。バイアスは意志では消えません。「書く」「複数人で見る」「裏を取る」という仕組みで、構造的に外すしかない。

知見3 「誰と働くか」で見る、カルチャーは行動で決まる

三つ目は、個人の能力から一歩引いた視点です。

パティ・マッコードの『NETFLIXの最強人事戦略』は、人事の中心にたった一つの考えを置きます。社員にとって最大の報酬は、無料の食事でも豪華な特典でもなく「優秀な同僚と一緒に、難しい問題に挑めること」だという考えです。

だからネットフリックスは、会社を家族ではなく「スポーツチーム」と捉えます。家族は誰も切らないけれど、チームは常に最善の布陣を組む。しかも「今の穴を埋める採用」ではなく「6か月後に理想の成果を出しているチーム」から逆算して、必要な人材を今採る。

これは採用の目線を変えます。目の前の候補者が「いい人か」ではなく、「この人が入ると、チーム全体の水準が上がるか」で見る。一人を足すたびに平均が上がるか下がるか。その一点です。

では、その「合う・合わない」を何で判断するのか。ここでベン・ホロウィッツの『WHO YOU ARE』がつながります。

ホロウィッツは「企業文化は言葉ではなく行動でできている」と言います。壁に貼った理念ではなく、トップがいない場所で社員がどう判断し、誰も見ていないときにどう振る舞うか。それが文化の正体だと。

たとえば「時間厳守」を掲げるCEOが自分は会議に遅刻していたら、その会社に時間厳守の文化は根づきません。文化は、掲げた言葉ではなく、実際の行動でしか伝わらない。

だからカルチャーフィットの見極めも、「雰囲気が合う」では足りません。候補者が過去にどう行動したか。その行動が、自社が大事にしている価値観と重なるか。ホロウィッツふうに言えば「あなたは誰か」を、言葉ではなく行動の事実で確かめるわけです。

実務での示唆。カルチャーフィットを「話しやすさ」で測るのをやめる。過去の具体的な行動を聞き、それが自社の価値観と合うかで判断する。

明日からの3つの切り替え

知識を、行動に落とします。

誤解: 志望動機や熱意を聞けば、本気度がわかる。 → 熱意は演じられます。聞くべきは「過去に困難をどう乗り越えたか」の事実。「それで?」「具体的には?」と、意見が事実に変わるまで潜る。

誤解: 話が弾んで気が合う人は、いい人材だ。 → それは親近感バイアスかもしれません。面接直後に評価を書き出し、好感の理由を言語化する。書けない好感は、根拠のない好感です。

誤解: カルチャーフィットは、面接の雰囲気で感じ取れる。 → 雰囲気は表層です。過去の具体的な行動を聞き、それが自社の価値観と重なるかで見る。そして「この人が入ると、チームの水準は上がるか」を最後に自問する。

おわりに

面接が上手いことと、人を見抜けることは、まったく別の技術です。前者は場を温める力、後者は自分のバイアスを疑う力。

好感を持った瞬間こそ、いちばん目が曇っている。そう思って、もう一度その人の「行動」を見直すところから、採用は変わり始めます。

この記事で参考にした本

  • 小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』(フォレスト出版)。人物を4階層で捉え、意見ではなく行動の事実から見抜く方法。
  • パティ・マッコード『NETFLIXの最強人事戦略』。最高の同僚に囲まれる環境こそが最大の報酬だという人事思想。
  • ベン・ホロウィッツ『WHO YOU ARE』。文化は言葉ではなく行動で決まる、という組織づくりの原則。

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