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『すべてうまくいく人はこう考える』デイビッド・J・シュワルツ氏|資産は、脳の中でつくられる

健康・メンタル ✍ デイビッド・J・シュワルツ氏
約9分で読めます

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『すべてうまくいく人はこう考える』
目次

成功は、運や生まれ持った才能で決まる。多くの人がそう信じています。

でも『すべてうまくいく人はこう考える』は、その前提を静かにひっくり返します。著者のデイビッド・J・シュワルツ氏は、すべての業績は勇気ある人たちが大きな夢を持ったことに由来する、と言い切ります。違いは才能ではなく、自分の脳にどんな指示を出したか。

「資産とは、アイデアが実行に移された結果なのだ。」

つまり富も幸福も、まず頭の中でつくられる。そう考えると、スタートラインは案外、目の前にあります。

本書は2002年刊の『大金持ちになる人の考え方』を新たに翻訳・編集した一冊で、100ほどの短い「Idea」から成ります。夢の持ち方から人間関係、リーダーシップ、資産形成までを一気通貫で扱う構成です。この記事では、その骨格を編集部なりに10の流れへ束ね直して追っていきます。

こんな人におすすめ

派手な成功法則ではなく、今日から試せる小さな行動の本です。私はそこに好感を持ちました。

この本の核心――「願う」と「夢を持つ」は違う

新年に「今年こそ」と思うのに、年末には何も変わっていない。そんな経験はありませんか。

シュワルツ氏は、その原因を一言で突きます。

「願うことと夢を持つことは違う。願うことは受動的であり、頭も使わず努力もしない怠惰な気晴らしにすぎない。一方、夢を持つことは能動的であり、確かな行動計画に裏打ちされている。」

願いには行動計画がない。だからいつまでも願いのままです。一方、夢には具体的な計画がついている。この一行は耳が痛い人が多いと思います。私たちの「やりたいこと」の多くは、実は計画を持たない願いどまりだからです。

本書はこの対比を、人生の見方そのものにまで広げます。悲観主義者は人生を砂漠とみなして何もしない。楽観主義者は人生を農地とみなして懸命に耕す。同じ土地でも、見方が動きを変え、動きが収穫を変える、というわけです。

そして繰り返し強調されるのが、完璧なタイミングを待たないこと。種を蒔かなければトマトは実りません。土の乾き具合が完璧になるのを待っていたら、収穫はゼロになる。

少しずつでも今すぐ始めれば、長い目で見て必ず状況は前に進んでいる。後で大きく後悔しないために、今この瞬間に最初の一歩を踏み出す。これが出発点です。

夢に水をやるのは、決意と情熱だと本書は言います。能力が凡庸でも、好きなことに集中すれば道は開ける。だからまずは、自分がワクワクすることを探すところから始まる。精神論のようでいて、実は順番の指南なのだと私は受け取りました。

仕事を楽しむことが、見落とされた健康法

本書が次に置くのは「口笛を吹きながら仕事をしよう」というテーマです。

健康のためにあれこれ試すのに、多くの人が最大の要素を見落としている、とシュワルツ氏は指摘します。それが、仕事を存分に楽しむこと。楽しむ姿勢はストレスを減らし、健康と長寿を支えるという主張です。

しかも楽しさは伝染します。自分が楽しんでいなければ、周囲も楽しめない。だから仕事も学業も、まず自分が楽しむ工夫をする。これは気分の話ではなく、成果を生む実務的な前提として語られています。

ここで本書独特の「犠牲」という言葉が出てきます。

「犠牲を払うことは、未来に投資をするという意味になる。つまり、今日何かを手放して、明日それをもっと多く手に入れる、ということだ。」

リスクを冒さずに利益を得たり、働かずに報酬を得たりはできない。幸福も、業績も、お金も、昇進も、愛も、価値あるものはすべて何かと引き換えに手に入る。タダで手に入るものはない、という冷静な前提です。そして高い報酬を望むなら、地道な練習を重ねてプロを目指せ、と続きます。

ケーキのアイシング――期待を、少しだけ超える

私が最も実用的だと感じたのが「ケーキのアイシング」という考え方です。

相手が期待しているものに、ほんの少しだけ多めに乗せる。基本のケーキに、クリームを一筆塗るように。それが好意と信頼を生み、結果として富を引き寄せる。相手の期待を超えるものを与えられれば必ず成功する、とまで本書は言い切ります。

サービスの土台にあるのは、相手の理解です。顧客が求めている最高の結果を聞き出せば、解決策はすぐ見つかる。だから営業では、商品が相手にどう役立つかを知り、相手自身を知ることが先に来ます。謙虚に意見を求めれば、元手なしで大きな効果が得られる、とも本書は言います。

ここで「平均でいい」という妥協を、シュワルツ氏は厳しく戒めます。

「平均とは、最高の中で最低であり、最低の中で最高である。」

支出を抑えようと、どうでもいいことにけちけちする人がいます。でも大きく考える人にとって、小さなことは莫大な違いを生む。細部をおろそかにすれば、大きな被害につながることもある。要求された以上の質を出す。その卓越性の追求こそが、アイシングの土台になります。

恐怖は、行動した瞬間に消える

新しいことに挑戦したいのに、失敗が怖くて動けない。誰もが抱える壁です。

シュワルツ氏は、恐怖の正体を見抜きます。

「恐れていることをすれば、恐怖心はすぐに消える。」

成功や富や幸せを邪魔する恐怖心は、たいてい誤解から生まれている。だから打ち破る唯一の方法は、行動すること。嫌なことを先延ばしにすると重荷になる一方で、いざやってみると拍子抜けするほどすぐ終わる。これは誰もが心当たりのある感覚だと思います。

恐怖を減らすコツは、準備です。自信は準備に比例する。目上の人との面接で緊張するなら、相手も同じ人間だと言い聞かせ、十分に準備して笑顔で臨む。隠し事や恐怖心は目に出るけれど、信頼と自信もまた目に出る、と本書は言います。

そして失敗そのものを、本書は悪者にしません。

「成功の秘訣は、失敗を避けることではなく、失敗を通して成長することだ。」

失敗は避けられない。だから避ける対象ではなく、改善のためのデータとして扱う。航空機事故の原因究明や医学の進歩のように、失敗から教訓を引き出すのです。この捉え方一つで、挑戦のハードルはぐっと下がります。

与える人が増え、言葉が人を動かす

本書は「与え方」と「言葉づかい」にも一章ずつ割きます。成功する人は足し算をし、愚かな人は引き算をする。これが与えることへの基本姿勢です。期待より少し多めに与え、大切な人には自分の時間や才能という「自分の一部」を贈る。

ただし、何でも我慢するわけではありません。不当な扱いを受けたら、礼儀正しく、しかし断固として抗議する。気前のよさと、なめられないことは両立する、というバランス感覚が私には誠実に映りました。

人を動かす言葉にもコツがあります。漠然と褒めるより、具体的なアドバイスのほうが相手のやる気を引き出す。第三者がその人を褒めていた、と伝えると効果が大きい。そして報復ではなく繁栄を目指すこと。報復はお互いを不幸にし、繁栄はお互いを幸せにします。

熱意についても本書は容赦がありません。人が挙げる功績は、その人の熱意に比例する。失敗する人は、たいてい熱意が足りていない。では熱意が湧かないときは、と問えば、答えは意外です。

やる気が出ないのは、まだそのことを知らないだけかもしれない。知れば興味が湧き、興味がやる気を生む。だからまず、対象を深く知ることから始めるのです。

人は「利己心」と「自尊心」で動く

ここが本書の対人術の核心です。人は、他人のニーズより、自分や家族の幸福に最も関心がある。これを本書は「利己心」と呼びます。だから相手を動かしたいなら、自分の利益ではなく、相手にどんなメリットがあるかに全精力を注ぐ。

「あなたの利益は重要ではないのだ。相手が得る利益に全精力を集中させるべきだ。」

奉仕を先にすれば、報酬はあとから自然についてくる。逆説的ですが、これが本書の一貫した主張です。

もう一つの鍵が「自尊心」です。自尊心は、私たちが持つ最も重要なツールだとシュワルツ氏は言います。自尊心が高くなければ、すべては平均以下か、せいぜい平均で終わる。

子供がお金のためでなく自尊心のために全力を出すように、従業員も自尊心で動く。逆に自尊心を傷つけられた従業員は、サボタージュや離職、病欠、愚痴という形で報復しかねません。

その自尊心を満たす、最もコストの低い方法が、相手の名前を呼ぶことです。会話のなかで相手の名前を正しく、何度も呼ぶ。それだけで「あなたを大切に思っている」という強いメッセージになります。名前は持ち主にとって最も甘美な言葉だからです。

ついでに、本書は無益な習慣も指摘します。「私のほうが優れている」と張り合うマウント合戦です。勝っても相手に嫌われたら意味がない。会話の目的は、自分の優位を示すことではなく、相手の協力を得て自分の目標を達成すること。

だから自分が話すより相手に話させ、ときには勝ちを譲って花を持たせる。そのほうが、かえって実質的な協力を引き出せます。

資産は、収入とは別物

最後に本書はお金の話へ着地します。出発点は、収入と資産は別物だという指摘です。収入は稼ぐもの、資産は築くもの。多くの人は昇給すると生活レベルを上げ、高収入でも資産を失っていく。世の中の景気と自分の経済状態は別なので、常に自分の経済状態を改善する努力が要ります。

その具体策が「経済的自由税」です。収入の10%を、自分自身に課す税金として先に取り分け、投資に回す習慣をつける。本書はこれを「自分に100%の利益をもたらす唯一の税金」と呼びます。莫大な資産も、わずか数ドルから始まる。幸せな人生は毎日一歩ずつ築かれる、というわけです。

ここで効いてくるのが「時間の魔法」です。医者になるのに勉強が10年かかるとためらう若者に、シュワルツ氏はこう諭します。10年は長く思えるが楽しい経験になるし、そのあと医業を営む期間は40年ほど残っている、と。

今の時間と才能を投資して、あとでより大きな報酬を得る。この長期視点が、短期の不安を溶かします。

お金の使い方にも哲学があります。大切なことにはお金をかけ、どうでもいいことにけちけちしない。マイホームは妥協すると後悔するので、一等地を選んで「満足」を買う。

保険をけちって、いざというとき対応してもらえないのは本末転倒です。利益を増やす画期的な方法は、削ることではなく、大切なところに正しく投じることだ、と本書は言い切ります。

明日から何を変えるか

本書のアドバイスから、今日始められるものを三つ。

1. 収入の10%を「経済的自由税」として先取りで投資に回す 昇給を待たず、今の収入の最低10%を「自分への税金」として先に取り分け、投資に回しましょう。昇給分を生活費に溶かす前に、自動で別口座へ移すのが確実です。複利の力は、お金の量より時間が効きます。

2. 次の会話で、相手の名前を意識して何度も呼ぶ 「〇〇さん、どう思いますか」と、名前を会話に織り込む。たったこれだけで、相手の自尊心が満たされ、協力を得やすくなります。コストはゼロです。

3. 先延ばしにしている「嫌なこと」を一つ、今日やってしまう 苦手な連絡やクレーム対応など、気の重いタスクを一つ選び、思い切って片づける。やる前の恐怖が大きいほど、終わったあとの軽さも大きいはずです。

おわりに

本書を貫いているのは、終始シンプルなメッセージです。前向きに脳を設定し、相手の期待を少し超える奉仕を行動に移す。それだけで、富と幸福は誰の手にも届く。

夢を描き、今すぐ動き、仕事を楽しみ、相手の自尊心を満たし、平均を拒んで卓越性を追い、収入の一部を未来に回す。10章を貫くのは、結局このひとつながりの姿勢でした。

「犠牲を払うことは、未来に投資をするという意味になる。つまり、今日何かを手放して、明日それをもっと多く手に入れる、ということだ。」

今日、あなたが未来のために手放せる小さな何かは、いったい何でしょうか。


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