交渉が苦手です。
「押しが弱い」「頭の回転が遅い」「相手を論破できない」
ずっとそう思ってました。
橋下徹さんの『交渉力』を読んで、この考えが180度変わりました。
交渉の勝敗は、交渉の「前」に決まる。
交渉は「相手との闘い」じゃない
この本の核心は、シンプルです。
交渉は「相手との闘い」ではなく、「自分との闘い」である。
は?どういうこと?
著者の説明はこうです。
交渉が難しい本当の理由は、相手を説得することにはない。自分自身の「あれもこれも欲しい」という欲をコントロールし、「絶対に譲れない一つの目標」のために、他の要望を捨てる決断を下すことにある。
つまり、「相手を言い負かす」技術より、「自分の欲を捨てる」技術のほうが大事ってこと。
成功の9割は「準備」で決まる
橋下さんは断言しています。
交渉の成否の9割以上は、交渉が始まる前の「要望の整理」で決まる。
具体的には、こうします。
- 自分がその交渉で得たいものを全部リストアップする
- そのリストを「絶対に譲れない」と「譲ってもいい」の2つに分ける
- 「絶対に譲れない」を1つか2つに絞り込む
ここがポイント。
例えば10個の要望があったとする。絶対に譲れないものを1つに絞れたら、残りの9個は全部「交渉カード」になります。
手持ちのカードが9枚もあれば、交渉は楽になる。
逆に、10個全部「絶対に譲れない」と思ってたら、カードが0枚。詰みます。
「先に譲る」が実は最強
これが一番意外でした。
自分から先に譲歩することが、交渉の主導権を握る戦術になる。
普通、先に譲ったら弱腰に見えますよね。負けた感じがする。
でも、トランプ前大統領の例がわかりやすいです。
日米首脳会談の前、トランプは「日米同盟は不公平だ」「駐留経費をもっと払え」と言いまくってた。米軍撤退の可能性までちらつかせて、日本側を不安にさせた。
で、会談が始まるとどうなったか。
「日米同盟は同盟の中の模範だ」と、いきなり安全保障を約束した。
日本側が一番欲しかったカードを、あっさり先に切った。
これで日本側に「借り」ができた。
その結果、トランプが本当に欲しかった「貿易赤字の是正」で、日本から譲歩を引き出しやすくなった。
先に譲ったように見せて、本命を取る。
ただし、これが成り立つ前提があります。「何を捨てて、何を取るか」が事前に整理できていること。だから「準備が9割」なんです。
対立したら「分解」する
もう一つ、実践的なテクニック。
「賛成か反対か」で議論が膠着したら、要素に分解する。
例えば「地下鉄民営化に賛成か反対か」で対立してるとします。
このまま議論しても平行線。
でも、分解するとどうなるか。
- 運営会社の形態
- 職員の雇用条件
- 路線の拡張計画
- 運賃の決定方法
要素ごとに見ると、実は「ここは賛成」「ここは反対」と、細かく分かれることが多い。
全面対立に見えても、実際には一部しか対立してないことがある。
分解すると、妥協点が見えてきます。
「仮想の敵」を作れ
交渉には駆け引きがある。
でも、正面からの駆け引きは難しい。相手も自分も疲弊する。
そこで著者が提案するのが、「仮想の敵」を設定すること。
例えば、価格交渉で「もう少し安くしてほしい」と言いたいとき。
「私はこれで決めたいんです。でも、上司が首を縦に振らなくて…」
「本当はこの条件で進めたいんですけど、稟議が通らないんです」
自分は味方だけど、「第三者」が壁になっている、という構図を作る。
これで相手と直接対立せずに、交渉を進められる。
ずるい?
いや、これが現実の交渉術です。
読んでから変わったこと
正直、交渉への苦手意識が減りました。
「相手を論破しなきゃ」じゃなくて、「自分の優先順位を整理しなきゃ」と思えるようになった。
最近やった交渉でも、事前に「これだけは絶対に取る。あとは譲っていい」と決めておいたら、すごく楽でした。
相手が何を言っても、心の中で「それは譲れるカードだな」と冷静に判断できた。
こんな人に読んでほしい
- 交渉の場になると緊張して、うまく話せない人
- 「あれもこれも」と欲張って、結局何も取れない人
- 「先に譲ったら負け」と思ってる人
- 議論が平行線になると、どうしていいかわからなくなる人
交渉は「話術」じゃない。「準備」だ。
そして、最大の敵は相手じゃない。
「あれもこれも欲しい」と思ってしまう、自分自身です。
この本、交渉が苦手な人ほど読んでほしい。
「苦手」の正体がわかると、ちょっと楽になります。
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