「お金を増やしたいけど、何から始めればいいかわからない」。そう思って投資の本を手に取る人は多い。でもこの本は、いきなり投資の話から始めません。
肉乃小路ニクヨさんの『確実にお金を増やして、自由な私を生きる!』が最初に言うのは、「お金を増やしたかったら、自分を好きになれ」。証券会社、銀行、保険会社と金融界を渡り歩いた元外資系エリートが、「ニューレディー」として活動しながら語る資産形成の本。テクニックの前にマインドセットを据えるところが、他のマネー本と決定的に違います。
こんな人に読んでほしい
節約はしているのに、なぜかお金が貯まらない人。投資を始めたいけど、自分には無理だと思い込んでいる人。給料が上がらず、キャリアの方向性に迷っている人。お金を使うことに罪悪感がある人。
この本は、あなたの人生を「自分株式会社」として経営し直す方法を教えてくれます。
この本の核心──お金は「自分を幸せにするための最強の道具」
一言でいうと、お金は災いを呼ぶものでも汚いものでもなく、自分を幸せにするための「道具」。
著者は元外資系金融エリートでありながら、ドラァグクイーンとしても活動する「ニューレディー」。この独自のバックグラウンドが、綺麗事ではない「泥臭い生存戦略」を可能にしています。金融のプロとしての合理的な知見と、マイノリティとして生き抜いてきた経験が融合した、血の通ったマネー論。
最大の特徴は、自分自身を一つの企業と見なす「自分株式会社」というフレームワーク。「貯める」「使う(自己投資)」「稼ぐ」「増やす」の4ステップを、経営者の視点で実行する。投資テクニックの本ではなく、お金と人生の「取扱説明書」です。
本書の全体像──貯める→使う→稼ぐ→増やす
第1章で「貯める」、第2章で「使う(自己投資)」、第3章で「稼ぐ」、第4章で「増やす(投資)」。
ここで注目すべきは順番です。「貯める」と「増やす」の間に「使う」が入っている。単なる節約→投資ではなく、自己投資で稼ぐ力を高めることが、最終的な資産増大に不可欠だという構造。この順番自体が、著者のメッセージそのものです。
「自分株式会社」──人生は経営である
著者がしっくりきたたとえは「人生は経営だ」。
自分という資源を開発し、利益を出し、社会に還元する。自分が商品であり、従業員であり、経営者。この視点を持つと、日々の支出が変わります。
何か買うとき、「これは経営目標に沿っているか? 後でちゃんと説明できるか?」と考える。すべての支出に「説明責任(アカウンタビリティ)」を持たせる。これだけで、無駄な浪費が激減する。
プロフィットセンターとコストセンター──支出を2つに分ける
「自分株式会社」の支出は2種類。
プロフィットセンターは、将来の利益に直結する攻めの支出。読書、スキルアップ、人脈構築、健康維持。これは「投資」です。
コストセンターは、維持に必要な守りの支出。住居費、食費、通信費、娯楽、推し活。これは「経費」。
面白いのが、著者は「推し活」をコストセンターの中の「福利厚生」と位置づけていること。従業員(自分)のモチベーションを維持するための合理的な支出、という発想。ストイックな節約を強いるのではなく、「機嫌よく働き続ける」ための快適さへの投資は、回収できる経費だと。
「強制貯金」──余ったら貯めるのではなく、先に確保する
「お金を貯めないと、お金を好循環させるゲームのスタートラインにすら立てない」。
著者の方法はシンプル。給料が入ったら、最初に「自分の未来のため」のお金を別口座に確保する。残りで生活する。手取りの約3割が目安。
ポイントは「余ったら貯金」ではなく「先取り貯金」。余ったお金は、どうせ使ってしまう。先に確保してしまえば、残った予算内でやりくりする力が自然につく。「自分のために確保する」と考えると、強制感がなくなるのもうまい。
読書は最高のコスパ投資
著者が推す最高の自己投資は読書。
「著者の脳汁が詰まったノウハウを数時間・数千円で吸収できる」。コストパフォーマンスで考えれば、これに勝る自己投資はない。
もう一つの自己投資は「旅」。ただし「非日常」ではなく「異日常」。観光客として訪れるのではなく、現地の生活に溶け込むように過ごす。日常を俯瞰して気づきを得るフィールドワーク。
「ブス飲み」を排除する──孤独の価値
「孤独を恐れるか、孤独な時間に情報を仕入れて面白い人間になるか。人間の価値はそこで決まります」。
著者が「ブス飲み」と呼ぶのは、愚痴や悪口を言い合うだけの生産性ゼロの飲み会。時間とお金と運を奪う。正直、この名前のつけ方だけで記憶に残る。
一人の時間を確保し、読書や勉強に充てる。無駄な人間関係を整理し、自分の価値を上げることに集中する。孤独は敵ではなく、最強の自己投資タイムです。
ノートパソコンは必須の武器
「これからの時代に稼ぐために必須のツールは、自分用のノートパソコン」。
スマホだけだと情報の「受け手」にしかなれない。パソコンがあれば情報を「加工」して「発信」できる。これが「マッチングの時代」で仕事を獲得するカギ。
10万円以下で十分。タッチスクリーン機能があるものを定期的に買い替える。ChatGPTなどの生成AIに触れる習慣をつける。著者は「スマホ消費」から「PC発信」への転換を、稼ぐ力の基盤と位置づけています。
稼ぐ力を上げる──「時間の安売り」をやめる
「報酬が割に合わないと思ったら、仕事を変えましょう。すぐにです」。
我慢して低賃金で働く時代は終わった。ジョブ型雇用の時代には、ゲネラリストよりもスペシャリスト。自分の「売り」を明確にし、職務経歴書を作成して市場価値を客観視する。
著者は「これからの時代は『一所懸命』ではなく『適所賢明』」と言います。一つの場所に固執せず、自分に合った場所を賢く選ぶ。英語力を鍛えることも推奨しています。インターネットコンテンツの57.7%は英語。日本語は3.2%。この数字を見れば、英語ができることの経済的価値がわかります。
固定費の最適化──住居費3割ルール
大きな固定費を見直すことが、貯蓄・投資余力を生む。
住居費は手取りの3割以内。これを超えたら身の丈に合っていない。著者はライフスタイルの柔軟性を重視して賃貸派。
通信費は格安プランに変更。月3000円程度で十分。
保険は必要最低限に。独身や共働きなら、過大な死亡保障は不要。日本には「高額療養費制度」がある。公的保障で足りない分だけを民間保険でカバーすれば十分。
「細々した節約はやってもいいけど、ストレスになるしプライオリティも低い」。快適さや機嫌を重視する方が、トータルでお金は貯まるというのが著者のスタンスです。
投資の王道──パッシブ運用で長期・積立・分散
投資を始める段階になったら、「夢やロマンを求めない」。夢やロマンを持ったら、それは投資ではなく博打。
著者の推奨は明確です。
手数料の安いインデックスファンド(パッシブ運用)で、毎月一定額をコツコツ買い続ける「ドルコスト平均法」。買い時を見極めようとするのはプロでも困難。だから機械的に買い続ける。
つみたてNISAとiDeCoの非課税枠をフル活用する。通常なら運用益に約20%かかる税金がゼロ。新NISA(2024年〜)のつみたて投資枠は年間120万円、非課税保有限度額は1800万円。
GPIFのポートフォリオを参考にする。国内株式25%、国内債券25%、外国株式25%、外国債券25%。日本の年金を運用する機関の黄金比率。リーマンショックを含めても年率平均3.97%。初心者はこれを真似するだけでいい。
推し活的株購入──個別株は「応援」の気持ちで
個別株をやるなら、ギャンブルではなく「推し活」。
自分が消費者としてサービスを使い、心から応援したい企業の株を長期保有する。バフェットのように割安な銘柄から未来のストーリーを感じる株を選ぶ。
ただし著者は、500万円の損失を出した仕手株の失敗経験を持っている。「投資に夢やロマンを求めると大変なことになる」。この言葉は実体験に裏打ちされた重みがあります。
ピケティの不等式「r > g」──なぜ投資が必要なのか
「r(資本収益率)> g(経済成長率)」。ピケティが『21世紀の資本』で示した不等式。
労働で稼ぐ成長率より、資産からの収益率のほうが常に高い。つまり、働くだけではお金持ちとの格差は開く一方。だから労働で稼いだお金を「資産化」して、お金にも働いてもらう必要がある。
日本の銀行預金は普通預金で0.001%。1000万円を1年預けても利息は100円。税引き後は約80円。預貯金は「増やす」手段にはなり得ない。だからこそ投資が必要なんだ、という論理展開が明快です。
年代別の実践ロードマップ
著者は年代別の具体的なアドバイスも提示しています。
20代:まず200万円を貯める。半年分の生活費を確保したら、残りは全額自己投資でもいい。若い頃の貧しさは「大リーグボール養成ギプス」のようなもの。虚栄心のコントロール力が身につく。
30代:最低300万円を預貯金で確保。キャリアの棚卸しをして市場価値を把握。スペシャリストとしてのポジショニングを意識する。
40代以降:積み上げた資産を守りながら運用。固定費の見直しと人間関係の整理を定期的に行う。
実践アクション:「自分株式会社」の経営を始める3ステップ
1. 今月の支出を「プロフィットセンター」と「コストセンター」に仕分ける
クレジットカードの明細や銀行の引き落としを全部出して、「将来の稼ぐ力を高める支出」と「維持のための支出」に分ける。プロフィットセンターの割合が低すぎないか確認する。特に「ブス飲み」的な支出がコストセンターを膨らませていないか。
2. 次の給料日から「強制貯金」を始める
給料が入った瞬間に、手取りの2〜3割を別口座に移す。可能なら給与天引きの定期預金を設定。残りの予算内で生活する習慣をつける。「余ったら貯める」は絶対にうまくいかない。先に確保することで、残りで工夫する力がつく。
3. 証券口座を開設して、つみたてNISAの自動積立を設定する
ネット証券で口座を開設し、新NISAのつみたて投資枠を活用。全世界型株式かS&P500連動のインデックスファンドを選び、月々の積立を自動設定する。買い時は考えない。毎月同じ額をコツコツ買い続けるだけ。投資を「放置」しながら、本業と自己投資に集中する。
おわりに
「自分がブランドだから、モノの力に頼らない」。この言葉に、著者のすべてが詰まっています。お金を増やすのは、自分を好きになった先にある。
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