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ブクドリ | BOOK DRIP

「強みが見つからない」人は、探す場所を間違えている

約6分で読めます キャリア・働き方
目次

強みは、探すと見つかりません。すでに毎日使っているものだから、いちいち意識に上がってこない。

「あなたの強みは何ですか」と聞かれて、すぐ答えられる人は少ない。多くの人は、履歴書に書けるスキルや資格を思い浮かべ、そして「特にないな」と黙り込みます。

でも、それは強みがないからじゃない。強みを「外から手に入れる特別な能力」だと思い込んで、間違った場所を探しているだけです。

この記事では、才能や強みが本当はどこに隠れているのか、そしてどうやって見つけて言葉にするのかを、3冊の本を手がかりに一緒に見ていきます。

なぜ「強み探し」はいつも空振りに終わるのか

強みが見つからない最大の理由は、探し方の前提がずれているからです。

多くの人は「人よりうまくできること」を強みだと考えます。だから他人と比べる。比べれば必ず自分より上の人が見つかって、「これは強みと言えるほどじゃない」と引っ込めてしまう。

『世界一やさしい「才能」の見つけ方』で八木仁平さんが指摘するのは、この他者比較そのものが罠だということ。才能とは「つい、やってしまうこと」であって、他人との優劣とは関係ない。

やっかいなのは、才能は自分にとって当たり前すぎて、自分では気づけない点です。息を吸うのと同じで、無意識にやっているから「できている」という感覚すらない。

たとえば同書には、旅行前に分単位で計画を立てるAさんが出てきます。本人はそれを普通だと思っていた。八木さんに「それは才能ですよ」と言われて、初めて自覚した。

自分の才能が自分に見えないことは、研究でも裏づけられています。八木さんが引く調査では、300組のカップルに互いの性格を採点させると、自己申告よりも身近なパートナーの採点のほうが的確だった。自分のことは、自分がいちばんわからない。

さらに厄介なのが「なりたい自分」への憧れです。別の誰かになろうとした瞬間、いま持っている才能を「たいしたことない」と手放してしまう。探しているつもりで、見つけたものを捨てているんです。

才能は「名詞」ではなく「動詞」の中にある

強みを見つけたいなら、まず「動詞」で自分を見ることです。

八木さんは、才能は名詞ではなく動詞で表れると言います。「旅行が好き」は名詞で止まっている。でもよく見ると、旅先で写真を撮って伝えるのが好きな人もいれば、計画を立てるのが好きな人もいる。同じ「旅行好き」でも、動いている中身はまるで違う。

たとえば「読書が好き」も、静かに一人で没頭したいのか、読んだ内容を人に話したいのかで、隠れている才能が変わります。名詞のままだと、この違いが見えない。

面白いのは、まったく畑の違う本が同じことを言っている点です。

森岡毅さんは『苦しかったときの話をしようか』で、強みは「好きな動詞」の中にあると書いています。就活に悩む娘に向けて、幼い頃から時間を忘れて没頭したことを「〜すること」の形で書き出せ、と。バッグが好き、ではなく、作戦を考えるのが好き、人と会うのが好き。動詞で捉えると、自分の輪郭が見えてくる。

森岡さんはさらに、その動詞を3つに仕分けます。考える力、伝える力、人を動かす力。自分の動詞がどこに偏っているかで、活きる仕事が変わる。

たとえば同書には、マーケティングが苦手でロジスティクス部門に異動したFさんの話があります。「物事の仕組みを精密に理解する」という彼の動詞は、マーケの現場では目立たなかった。でも生産管理の現場に移った瞬間、大活躍して工場長にまで上りつめた。

能力が変わったわけじゃない。動詞が活きる場所に移っただけです。

だから最初の一歩は、スキルの棚卸しではなく、動詞の書き出しになります。「自分はどんなときに、つい〜してしまうか」を思い出す。ここに、まだ言葉になっていない才能が眠っています。

短所は、才能が置き場所を間違えているだけ

ここが、いちばん誤解されているところです。短所と長所は、別々のものではありません。同じ才能が、置かれた場所によって長所にも短所にも見えるだけです。

八木さんはこれを「短所←才能→長所」という形で表します。才能は包丁のようなもので、料理に使えば人を喜ばせ、向ける先を間違えれば人を傷つける。刃そのものに善悪はない。

たとえば「飽きっぽい」は、裏を返せば「新しいことにすぐ興味を持つ」才能です。「一人でも平気」は「集中して深く考えられる」才能。短所に「だからこそ」を付けて言い換えると、同じ性質が別の顔を見せます。

内向型の気質は、この構造がよくわかる例です。

心理療法士のマーティ・レイニーは『内向型を強みにする』で、内向型と外向型の違いはエネルギーの源にあると説明します。内向型は情報を処理する脳内の経路が長く、考えをまとめるのに時間がかかる。だから会議で即答できない。

外向型が主流の職場では、これは「意見がない」「反応が遅い」という短所に見えます。でもレイニーは、内向型も時間をもらえれば質の高いアイデアを出せると指摘します。「ちょっと考えさせて」と一言もらうだけで、弱点が強みに反転する。

同じ気質が、環境しだいで評価が真逆になる。問題は本人ではなく、置き場所だったわけです。

八木さんの本にも、似た例が並びます。「ネガティブなことばかり気になる」と注意されていたUさんは、炎上を防ぐ謝罪会見のプロになり、そのリスク察知力で信頼された。100人を同時にさばく職場で成果が出なかったKさんは、一人ずつ親身に向き合う仕事に移って、労働時間は半分、収入は倍以上になった。

「自分は仕事ができない」のではなく、「才能が活きない場所にいる」だけ。この見方の違いは大きい。短所を消そうと消耗するか、才能が輝く場所を探すか、進む方向が正反対になります。

明日から、才能を「発見」する手順

才能は探すものではなく、すでにある行動から発見して言葉にするもの。そう考えると、やることが具体的に変わります。

誤解:強みは「人よりうまくできること」だから、比べて探す。 → 比べるほど見つからなくなる。優劣の物差しを、いったん脇に置く。

正しいアプローチ:「つい、やってしまうこと」を動詞で書き出す。 → 今日の5分でできます。直近1週間で「他人にイラッとした瞬間」を3つ思い出して書く。イラッとするのは、自分には当たり前にできることを相手ができていないから。その裏返しが才能です。「なんで先に共有しないの」とイラッとしたなら、あなたには「先回りして伝える」才能がある。

誤解:短所は、頑張って克服すべき欠点だ。 → 克服しようとすると、裏側の長所まで一緒に潰れる。

正しいアプローチ:短所に「だからこそ」を付けて、活きる場所を考える。 → 「心配性だ。だからこそ、リスクを先に潰せる」。性質は変えず、置き場所を変える発想に切り替える。

誤解:自分の強みは、自分がいちばんわかっている。 → 当たり前すぎて、自分にはいちばん見えない。

正しいアプローチ:信頼できる人に、直接聞いてみる。 → 「私が自然にやっていて、あなたには真似しにくいことって何?」と3人に聞く。他人の目は、自分の死角を映す鏡になります。

まずは5分の書き出しから始めるのがおすすめです。頭で考えるより、手を動かしたほうが、隠れていた動詞が出てきます。

才能は、どこか遠くへ探しに行くものではありません。もう毎日、あなたの中で勝手に動いています。

やることは、探すことではなく、気づいて言葉にすること。場所さえ間違えなければ、強みは最初からそこにあります。


この記事で参考にした本

『世界一やさしい「才能」の見つけ方』八木仁平 → 才能は「つい、やってしまうこと」。短所は才能の裏返しで、克服より活用だと教えてくれる一冊。

『苦しかったときの話をしようか』森岡毅 → 強みは「好きな動詞」に隠れ、それが活きる文脈を選ぶことで武器になる、という自己マーケティングの視点。

『内向型を強みにする』マーティ・O・レイニー → 短所に見える気質も、環境と使い方しだいで強みに反転することを、脳の仕組みから示した本。


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