今日来た仕事を今日やるから、いつまでも終わらない
目次
来たメールにすぐ返す。頼まれた仕事にすぐ着手する。
真面目な働き方に見えます。ところがマーク・フォースターの『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則』は、これを効率が上がらない原因として名指しします。
マニャーナはスペイン語で「明日」です。本書の基本ルールは、新しく発生した仕事は明日やる、というもの。
先延ばしを推奨しているわけではありません。今日の予定を守るための仕組みです。
リストが閉じていないから、終わらない
本書がまず疑うのは、ToDoリストです。
ToDoリストはオープン・リスト、つまり際限なく仕事が追加され続けるリストです。項目が増え続けるので、どれだけ処理しても終わりません。
優先順位をつければ解決するかというと、そうでもありません。順番が変わるだけで、総量は減らないからです。
代わりに本書が提案するのがクローズ・リストです。その日にやると決めた仕事だけを朝に書き出し、その後に来た仕事は原則として翌日に回す。リストを閉じてしまいます。
すると、その日の終わりに「全部終わった」という状態が作れます。ToDoリストでは、この状態は永遠に来ません。
割り込みに反応する脳と、計画する脳は別
なぜ、こんな仕組みが要るのか。
本書は人間の中に2つの脳を想定します。計画を立てる理性の脳と、反射的に反応する衝動の脳です。そして通常は、衝動の脳が優先されます。
新しいメールの通知が来た瞬間、理性の脳が立てた計画は後ろに下がる。これは意志が弱いからではなく、そういう順番で動くようにできているからです。
だから著者は、意志の力に期待しません。計画を守るために必要なのは、仕事と自分の間に置く時間的な距離のほうだ、と。
新しい仕事を1日寝かせる。それだけで、反射で処理するか計画に組み込むかを選べるようになります。
「すぐやる」が、本当の仕事を押し出す
もうひとつ、本書には耳の痛い区別があります。本当の仕事と、忙しいだけの仕事です。
本当の仕事は、目標に直結していて、たいてい抵抗を感じます。忙しいだけの仕事は、片づけると気持ちがいいけれど、成果には結びつきません。
そして、数分で終わる仕事はすぐやるべきだという定番のアドバイスを、著者は否定します。すぐやるメソッドは、忙しいだけの仕事に飛びつく元凶になり、本当の仕事を忘れさせるからです。
抵抗感の扱い方も逆でした。仕事への抵抗感は「やらないほうがいい」というサインではなく、行動をうながすサインだと本書は書きます。逃げるほど抵抗感は大きくなり、着手すると小さくなる。
だから著者は、朝いちばんに最も重要な仕事へ最低5分だけ着手することを勧めます。衝動の脳をだますには、5分で足りるそうです。
明日からできること
誤解:「今すぐ」の仕事が多いのは、自分の段取りが悪いから → 本書はここを組織の問題として扱います。緊急の仕事が常時発生するなら、それは個人の能力不足ではなく、人員不足やマニュアルの不備といったシステム側に原因がある、と。
上司が思いつきで突発的に仕事を割り振ることについては、部下の計画を壊す行為だと厳しく書いています。
正しいアプローチ:明日のリストを、今日の終わりに閉じる → 今日発生した仕事は、明日のリストに入れて今日は触らない。真の緊急事態だけを例外にする。
メールや電話のメッセージ、書類の処理も、その都度ではなく1日分をまとめて翌日に処理する。これだけで、割り込みの回数が激減します。
そして時間の区切り方について。本書のダッシュ法は、5分から最長40分まで時間を区切って全力で取り組み、時間が来たら必ず休むというものです。休憩は長くても2〜3分。
きりが良いところで休むのではなく、途中で無理に中断するほうが再開が楽になる、というのも本書の指摘です。脳が仕事に戻りたがるからだ、と。
もし手順そのものが立てられないなら、『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』の考え方が効きます。同書は、ミスや先送りを気合の不足ではなく手順の未完成として扱い、タスクに名前をつけて細かく分解し、仮の締切を設けることを勧めています。
おわりに
時間が足りないという嘆きについて、著者はこう書いています。それは魚が「水が足りない」と言うようなものだ、と。
時間はいつも同じだけあります。足りていないのは、その日にやる量を決める行為のほうでした。
明日のリストを閉じる。今日できることは、それくらいです。
この記事で参考にした本
『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則・完全版』マーク・フォースター → 新しい仕事は明日やる、ToDoリストではなくクローズ・リスト。意志ではなく仕組みで計画を守るための一冊。
『要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』 → ミスや先送りを手順の未完成として扱う視点。タスクを分解して可視化する具体策が並ぶ。
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