一発で当てようとする人ほど、結局遅い
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新しい挑戦を「一発で当てよう」とする人がいます。私もそちら側でした。
でも、北の達人コーポレーションの木下勝寿さんは『時間最短化、成果最大化の法則』で、まったく違う前提を置いています。
10回やれば誰でも1回は成功する。だから最初から「9回分の失敗」を織り込んだスケジュールと予算を組む。
つまり、成功率を上げるのではなく、試行回数を確保するほうを設計する。これが一発狙いより速い、という話です。
なぜそうなるのか。今日は完成度と速さの関係を見ていきます。
完璧主義の正体は、丁寧さではなく制御欲
まず、完璧主義という言葉の中身を分解します。
オリバー・バークマンは『不完全主義』で、現代人の不安の根っこに「現実を完璧にコントロールできるはずだ」という信念があると指摘しています。
つまり完璧主義は、丁寧さの話ではありません。制御できるという前提の話です。
この前提があると、着手が遅れます。準備が足りない気がする。情報が揃っていない気がする。まだ出せる状態ではない気がする。
たとえば、企画書。7割まで作った段階で見せれば方向のずれが分かるのに、9割まで作ってから見せる。そして「そもそも前提が違う」と言われて、9割分を捨てることになります。
バークマンの言い方を借りれば、状況が「思ったよりずっと悪い」と認めたときに、人は初めて不可能な戦いから降りられます。降りると、本当に大切なことに集中する余地が生まれる。
ここでの「降りる」は、手を抜くことではありません。全部を制御しようとするのをやめる、という意味です。
「9回分の失敗」を先に予算に入れる
では、制御をやめたあと、何を設計するのか。
木下さんの答えが、試行回数です。
10回に1回の法則を前提にすると、計画の形が変わります。一発勝負のスケジュールではなく、10回打てるだけの時間と資金を先に確保する。すると、途中で心が折れにくくなります。
これは精神論ではなく、配分の話です。
たとえば、新しい集客チャネルを試すとき。1つの施策に予算を全部つけて3か月回すのか、5つの施策に分けて1か月ずつ回すのか。後者のほうが、当たりを見つける確率は上がります。
木下さんは、確率25%の作戦Aだけに頼るのを「運任せ」と呼び、作戦B、C、Dを並行して用意して合計で100%分のアクションを維持することを勧めています。
ここで注意したいのは、これがすべての仕事に当てはまるわけではないことです。品質が人命や信用に直結する領域では、試行回数より確実性が優先されます。
10回に1回でいいのは、失敗しても取り返せる領域に限ります。裏を返せば、多くの日常業務はその領域に入っています。
保留した判断は、脳を占領し続ける
3つ目は、完成度とは別の遅さの原因です。
木下さんが挙げるのが「ピッパの法則」。ピッと思いついたらパッとやる。その場でやるか、いつやるかを即決する。
なぜ即決が効くのか。保留したタスクは、頭の中に居座り続けるからです。
木下さんは、10分後に電話をかけ直すといった些細な記憶でも脳に置かず、すぐリマインダーに登録することを勧めています。頭を空にして、脳のリソースを思考に回すためです。
そして、10分以内で終わるタスクは重要度や緊急度に関係なく今すぐ片付ける。次の人にボールを渡して、自分の手が止まっている時間をゼロに近づける。
たとえば、確認依頼のメール。返信に2分しかかからないのに「あとでまとめて」と置いておくと、その2分は消えないまま何時間も頭の隅に残ります。
イ・ミンギュさんも『後回しにしない技術』で、成果を分けるのは知識やアイデアの質ではなく実行力だと書いています。そして実行力は生まれつきの意志の強さではなく、練習で身につく技術だ、と。
決心、実行、維持の3段階それぞれに手法がある。ここも、根性の話ではありません。
明日からできること
誤解:完成度を上げてから出すほうが、結果的に速い → 完成度が上がるほど、方向が違ったときの損失が大きくなります。7割で見せて方向を確かめるほうが、総時間は短くなります。
正しいアプローチ:出す前提を「1回」から「複数回」に変える → 施策でも企画でも、最初から2案から3案を並べて小さく試す。1案に全額をかけるのは、確率ではなく賭けです。
もうひとつ、今日からできることがあります。
手元に溜まっている「10分以内で終わるもの」を数えて、そのまま片付ける。返信、確認、申請。数が多いほど、頭の容量を奪われていた量も大きい。
木下さんの言い方を借りれば、頭は保管庫ではなく作業台です。置きっぱなしのものが多いほど、作業できる面積が減ります。
おわりに
速い人が速いのは、手が速いからではありません。
一発で当てる前提を捨てて、試す回数を確保しているからです。完成度は、回数を重ねた結果として上がっていきます。
先に上げようとすると、たいてい間に合いません。
この記事で参考にした本
『時間最短化、成果最大化の法則』木下勝寿 → 10回に1回の法則、ピッパの法則、アイドルタイムの撲滅。試行回数を設計するという発想をくれた一冊。
『不完全主義』オリバー・バークマン → 完璧主義の正体は「現実を制御できるはずだ」という信念。有限性を認めたところから自由が始まる。
『後回しにしない技術』イ・ミンギュ → 成果を分けるのは実行力であり、それは意志ではなく練習で身につく技術だという整理。
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