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ブクドリ | BOOK DRIP

その不調、たんぱく質が足りないだけかもしれない

約6分で読めます 健康・メンタル
目次

「たんぱく質は、筋肉をつけたい人のもの」。長いあいだ、私はそう思っていました。

でも、これは大きな誤解でした。

疲れが抜けない。気分が晴れない。むくむ。肌が荒れる。なんとなく調子が悪い。

病院に行くほどではない。でも、確かに不調。

その正体のひとつが、たんぱく質という一つの栄養素の不足かもしれません。今日はそういう話をします。


「筋肉の材料」は、たんぱく質の一面にすぎない

たんぱく質、プロテイン、筋肉。この3つは、頭の中でほとんど同じ意味で結びついています。

でも、体の中を見ると、たんぱく質が働いている場所はもっと広い。

藤田聡さんが監修した『眠れなくなるほど面白い 図解 たんぱく質の話』によると、体内のたんぱく質は体重の約30〜40%を占めます。

筋肉だけではありません。血管、内臓、皮膚、髪、爪。その主成分がたんぱく質です。

さらに、体を調整するホルモン、消化を助ける酵素、体を守る免疫細胞。これらの材料にもなります。

そして意外なのが、気分を左右する神経伝達物質です。やる気に関わるドーパミンや、心を安定させるセロトニンも、もとをたどればアミノ酸、つまりたんぱく質からできています。

たんぱく質が足りないと、影響は筋肉だけにとどまりません。全身のあちこちで、小さな不具合が起きます。

気になるのは、日本人の摂取量です。

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、日本人のたんぱく質摂取量は1995年の1日81.5gあたりをピークに減り続け、近年は1950年代と同じ水準まで落ち込んでいます。

飽食の時代と言われながら、この一点だけは戦後並みに戻っている。少し不思議な話です。


疲れ、むくみ、肌荒れ、気分の落ち込み、その共通項

たんぱく質不足のサインは、教科書どおりには出てくれません。「筋肉が落ちました」と親切に教えてはくれない。もっと分かりにくい形で現れます。

たとえば、貧血。

貧血といえば鉄不足、と思いがちです。でも、酸素を運ぶヘモグロビンは、ヘム(鉄)とグロビン(たんぱく質)が結びついたものです。

鉄をいくら摂っても、材料のたんぱく質が足りなければ、赤血球はうまく作れません。鉄剤を飲んでも改善しない貧血の裏に、こういう背景があることもあります。

むくみもそうです。

同じ本によると、ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、血液を心臓へ押し戻すポンプの役割を持ちます。筋肉が痩せると、このポンプが弱まり、下半身に水分がたまりやすくなります。

肌や髪も分かりやすいサインです。

肌のハリを生むコラーゲンも、正体はたんぱく質です。しかも体は、取り込んだたんぱく質をまず内臓や血液に回します。皮膚や髪に届くのは、いちばん最後です。

だから不足すると、肌や髪から先に元気がなくなります。高い化粧水を足す前に、食事の中身を疑う価値はあります。

そして、気分。

先ほどのセロトニンやドーパミンを思い出してください。材料が足りなければ、心の安定装置もうまく働きません。「なんとなく落ち込む」の裏に、栄養の問題が隠れていることもあります。


増やす前に、「何から摂るか」を決める

ここまで読むと、「とにかくたんぱく質を増やせばいい」と思えてきます。

でも、話はそう単純ではありません。増やすなら、何から摂るかが大事になります。

参考になるのが、UCLAの医師・津川友介さんの『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』です。

この本は、一人の経験談ではなく、多くの研究を統合した「メタアナリシス」という強い証拠をもとに、食品を仕分けます。

そこで健康に良いと示されたのは、魚、野菜と果物、玄米などの茶色い炭水化物、オリーブオイル、ナッツの5つ。数を絞っているのが特徴です。

一方で、たんぱく源として身近な赤い肉(牛や豚)と加工肉には、注意がついています。

たとえば、加工肉。ハムやソーセージです。

同書が引くWHOの国際がん研究機関は、2015年に加工肉を「人に発がん性がある」グループに分類しました。加工肉を1日50g摂るごとに大腸がんのリスクが18%上がる、赤い肉は1日100gごとに17%上がる、という研究も紹介されています。

たんぱく質を増やそうとしてハムやソーセージ、赤身肉ばかりに寄せると、別のリスクを抱え込みかねません。

同じたんぱく源でも、魚や鶏肉(白い肉)、大豆製品、卵は、この本の評価がずっと良い。津川さんは赤い肉を魚や鶏肉に「置き換える」ことをすすめています。

「たんぱく質を増やす」と「肉を増やす」は、同じではありません。ここを分けて考えると、選び方が変わります。


まとめて食べても、体は取りこぼす

摂り方にも、コツがあります。

たんぱく質は、糖質や脂質と違って、体にためておけません。余った分は、そのまま排出されます。

藤田さんの本によると、1回の食事で筋肉の合成に使われる量には上限があり、目安は20gほど。夜にステーキを300g食べても、全部が活かされるわけではありません。

だから、まとめ食いより分散です。

たとえば、朝食。

夕食から朝までは、何も入ってこない時間です。その間、体は自分の筋肉を分解してエネルギーを作っています。朝にたんぱく質を入れると、分解から合成へスイッチが切り替わります。

コーヒーとトーストだけの朝を、卵や納豆、ヨーグルトを足した朝に変える。効果は地味ですが、理にかなっています。

量の目安も持っておくと便利です。

同書では、運動をあまりしない人で体重1kgあたり約0.9g、運動する人で1.6g前後が示されています。体重60kgなら、1日およそ54g以上が一つの目安です。

Testosteroneさんの『筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方』は、体を鍛える人向けに体重×2gとさらに多めを提案し、食事を4〜5回に分けることをすすめています。

グラム計算が面倒なら、「手のひら一枚分の肉や魚で約20g」と覚えておくと、毎食ざっくり見当がつきます。


明日から変えられること

情報を、行動に落とします。

よくある誤解は、「たんぱく質は多く摂るほど体にいい」「肉を増やせば足りる」というものです。

実際には、一度に使える量には限りがあり、何から摂るかで健康への影響も変わります。ここを踏まえて、できることは3つです。

  1. 朝食にたんぱく質を一品足す。ゆで卵、納豆、ヨーグルトのどれかでいい。1日の入り口で、体のスイッチを入れます。

  2. たんぱく源を、魚、鶏肉、大豆、卵に寄せる。赤身肉や加工肉は「毎日の主役」から「ときどきのごちそう」へ移します。

  3. 1日の目安量を、手のひらで見当をつける。毎食、手のひら一枚分のたんぱく源があるかを確認します。

ここで、注意点も添えておきます。

たんぱく質は多ければ多いほど良い、ではありません。過剰に摂れば、その分エネルギーは余ります。

腎臓に持病がある人は、たんぱく質の量を医師に管理してもらう必要があります。健康な人で腎機能が悪化するという明確な証拠は乏しい、と藤田さんの本は書いていますが、すでに腎臓を悪くしている人には当てはまりません。

必要量は年齢や体格、運動量、持病によって変わります。妊娠中や治療中の方はとくに、自己判断で大きく増減させず、かかりつけの医師や管理栄養士に相談してください。ここに書いたのは一般的な目安で、個別の診断や治療に代わるものではありません。


不調の原因リストに、一つ足す

不調の原因を、睡眠やストレスや運動不足だけで考えていた。私はそうでした。

そこに「たんぱく質」という一項目を足すと、見え方が変わります。

疲れも、むくみも、肌も、気分も、材料が足りているかをまず疑える。

体は、食べたものでできています。今日の一皿が、静かに明日の調子を決めています。


この記事で参考にした本

『眠れなくなるほど面白い 図解 たんぱく質の話』藤田聡(監修) → たんぱく質が全身の材料であること、不足のサイン、分散摂取と必要量の目安を学んだ

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』津川友介 → エビデンスで健康に良い食品を仕分ける視点、赤い肉や加工肉のリスクとたんぱく源の選び方を学んだ

『筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方』Testosterone → たんぱく質を中心に据えた食べ方と、食事を分けて摂る実践的な考え方を学んだ


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