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ブクドリ | BOOK DRIP

「AIみたいな文章だね」と言われたとき、読み手の中で起きていること

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約7分で読めます コミュニケーション・文章術
目次

書き手を伏せて読み比べると、AIが書いた広告文のほうが、人間の専門家の文章より好まれる。そんな実験結果があります。

それなら「AIみたいな文章だね」は褒め言葉のはずです。でも、言われてうれしい人はあまりいません。言った側も、たいていは褒めていない。

このずれは、文章の出来とは別の場所で起きています。読み手が気にしているのは、「この人は自分で書いたのか」という一点です。

文章の評価は下がらなくても、書き手への信頼は下がる

冒頭の実験は、MITのユンハオ・チャン氏とレネー・ゴスライン氏が2023年に発表したものです。1,203人に、家電の広告文や、リサイクルや運動を呼びかける文章を読ませました。

書き手を伏せた条件では、ChatGPT-4だけで作った文章の満足度が最も高くなりました。書き手を明かしても、AIの文章の評価は下がっていません。変化があったのは、人間の専門家の文章に「人間が書いた」と添えたときだけで、評価が上がりました。研究者はこれを「人間びいき」と呼んでいます。

では、文章でなく書き手はどう見られるのか。アリゾナ大学のオリバー・シルケ氏とマーティン・ライマン氏は2025年、13の実験をまとめて発表しました。教授の採点、求人への志望動機書、同僚への日程調整メールなど、場面を変えて「AIを使った」と明かした場合と明かさない場合を比べています。

結果は13の実験すべてで同じ向きでした。AIの利用を明かした人は、明かさなかった人より信頼されにくい。

たとえば志望動機書の実験では、「生成AIで作成」と添えた応募者だけが、信頼の評価を大きく落としました。「人間のキャリアコーチが手伝った」と添えた応募者は、何も添えない応募者とほとんど差がありません。手伝われたこと自体より、相手がAIだったことが効いています。

「人が確認して手直しした」「校正にだけ使った」と書き添えても、信頼の低下は消えませんでした。著者らは、仕事は本人がやるものだという暗黙の期待から外れて見え、正当性が疑われるためだと説明しています。

デューク大学のジェシカ・ライフ氏らの実験(PNAS、2025年、計4,439人)でも、仕事でAIの助けを借りた人は、人間の助けを借りた人より怠惰で能力が低いと見られました。ただ、AIが役に立つことがはっきりしている作業では、この減点は見られませんでした。

「AIみたい」という感想は、文章の出来への評価で終わりません。読み手はそこで、手を抜かれたのではないかと疑い始めています。

見抜く人が見ているのは、単語より「型」と「無難さ」

もっとも、多くの人は、AIの文章をそれほど見抜けていません。

コーネル大学のモーリス・ジェイクシュ氏らは、ChatGPTが公開される前の2022年に、求職や民泊、恋愛マッチングの自己紹介文を4,600人に判定させました(PNAS、2023年)。人間が書いたかAIが書いたかの正答率は50〜52%で、当てずっぽうとほぼ同じです。

人々は、一人称で語る文章や、家族や体験の話が出てくる文章を人間らしいと判断していました。ぎこちない言い回しはAIらしいと判断した。ところが言語モデルが出すのは、確率の高い、ありふれた言葉です。直感の手がかりが、実態と逆を向いていました。

一方で、見抜ける人もいます。メリーランド大学のジェナ・ラッセル氏らは、ふだん文章の仕事でAIを使っている5人に、英語のノンフィクション記事300本を判定させました(ACL、2025年)。5人の多数決が外れたのは、300本のうち1本だけでした。元の文章を言い換えたり、人間らしく見せる加工をしたりしても、ほとんど騙されていません。

彼らが挙げた手がかりは、次のようなものです。

  • AIが好む決まった語彙(英語なら “crucial” や “vibrant”)
  • 「〜だけでなく、〜も」の構文や、いつも3つ並べる列挙
  • 前向きだが中身のぼやけた締めくくり
  • 無難で、驚きもユーモアもない展開

文法が完璧すぎることも手がかりになっていました。人間の文章のほうが、小さな誤りが多いからです。

AIをほとんど使わない4人は、「難しい単語があればAI」「文法が正しければ人間」と考えがちでした。AIが書いた記事を正しく当てられた割合は56.7%で、偶然とほぼ変わりません。それでいて、判定への自信は高かったといいます。

こうした癖が出る理由は、AIの作られ方にあります。岡野原大輔さんは『大規模言語モデルは新たな知能か』で、言語モデルがしていることを、文脈から次に続くもっともらしい単語を予測する作業の繰り返しだと説明しています。ChatGPTのような対話AIは、そこから人間の評価者の好みに合わせる追加学習(RLHF)を経て、使いやすく整えられています。

カーネギーメロン大学のアレックス・ラインハート氏らの分析(PNAS、2025年)では、指示に従うよう調整したモデルのほうが、元のモデルより人間の文章から離れていました。現在分詞の構文を人間の2〜5倍、名詞化した表現を1.5〜2倍使い、くだけた文体を頼んでも、名詞の多い密な文章になりがちでした。

整っていて、無難で、誰が読んでも引っかからない。こうした癖は、そう作られた結果として出ています。なお、ここで紹介した判定の研究はどれも英語の文章が対象で、日本語で同じ手がかりが効くかは確かめられていません。

AIっぽさの正体は、常套句が並んだ状態

この話は、文章術の古い教えとよく重なります。

新聞記者の近藤康太郎さんは『三行で撃つ』で、文章塾の最初に「常套句をなくせ」と教えています。「抜けるような青空」と書いた時点で、書き手は空を観察しなくなるからです。「など」「さまざまな」のように、具体的に考えるのをやめたときに出る言葉も退けます。

さらに近藤さんは、事実を並べるだけの文章はAIに置き換えられ、価値は「自分はこう見ている」を示す「転」にあると書いています。

ラッセル氏らの専門家が挙げた手がかりと並べると、重なりが見えます。決まった語彙、決まった構文、無難な展開。どれも、書き手がその場で観察も判断もしなくても出てくる言葉です。

私は「AIみたいな文章」を、常套句が文や段落の単位で並んだ状態だと考えています。研究で確かめられた範囲を一歩出た、私の解釈です。

この見方に立つと、人間が書いても常套句で埋めれば同じ印象になります。反対に、下書きをAIに任せても、自分の観察と判断が入った文章なら、その印象から遠ざかるはずです。

言い換えでは消えない。消えるのは、判断が見えたとき

誤解:AIっぽい単語を言い換えれば、AIっぽさは消える → ラッセル氏らの実験では、言い換えや加工をしても、見抜ける人の判定はほとんど崩れませんでした。手がかりは単語に加えて、構成や中身の無難さにもあるからです。

正しいアプローチ:自分にしか書けない情報を、先に決めてから書く → 型を崩すより、中身に自分の判断を入れるほうが効きます。具体的には、次の3つです。

1つ目は、送る前に「型」を3つだけ探すことです。3つ並べた列挙、「〜だけでなく〜も」、前向きでぼやけた最後の一文。たとえば「効率化、品質向上、コスト削減につながります」と書いていたら、今回いちばん効くものを1つ選び、数字か場面を添えます。

2つ目は、自分しか知らない具体を1つ入れることです。たとえば打ち合わせのお礼メールなら、「大変参考になりました」で済ませず、相手の発言のうち実際に持ち帰った一言を書きます。

ここで気をつけたいのは、一人称や家族の話を飾りとして足すことです。ジェイクシュ氏らの研究では、まさにそうした手がかりにAIが合わせて、人間の文章より人間らしいと判定される文章を作れました。効くのは人間らしい飾りでなく、あなたしか持っていない情報です。

3つ目は、書き終えたら一度声に出して読むことです。ピーター・エルボウ氏は『自分の「声」で書く技術』で、自然に出てくる言葉には音や手ざわり、リズムがあり、それが文章の力の源だと書いています。自分なら口にしない言い回しに印をつけ、そこだけ書き直します。AIの下書きを直すときにも、5分あればできます。

道具として使うこと自体を避ける必要はありません。ただ、シルケ氏らの実験では、AIの利用を自分から明かすより、第三者に露見したときのほうが信頼を大きく失いました。「バレなければいい」という前提で使うのが、いちばん危うい使い方です。

開示するかどうかは、職場や媒体のルールに従うことになります。そのうえで、志望動機やお詫びのように誠意が問われる文章ほど、言いたいことと順番は自分で決めてから書き始めたいところです。

おわりに

「AIみたいな文章だね」という感想は、うまい、下手の評価とは少し違います。読み手には、書いた人の姿が見えなかった。そういう合図です。

整った文章なら、AIがいくらでも出してくれます。書き手に残るのは、その場で見たものと、自分で下した判断です。

次に文章を送る前に、どの一文が自分にしか書けないかを、1つだけ指さしてみてください。


この記事で参考にした本

『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』近藤康太郎さん → 常套句を使った瞬間に観察が止まるという指摘と、事実を並べるだけの文章はAIに置き換えられ、価値は「転」にあるという視点

『大規模言語モデルは新たな知能か』岡野原大輔さん → 言語モデルは次に続くもっともらしい単語を予測している、という仕組みと、人間の評価で出力を整えるRLHFの説明

『自分の「声」で書く技術』ピーター・エルボウ氏 → 自然に出てくる言葉のリズムこそが文章の力の源だという考え方と、文章を声に出して確かめる方法


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