「長生きするのは嬉しい。でも、死ぬまで働き続けるのだろうか」。この本はその不安から始まります。
漠然とした不安の正体を、著者の両@リベ大学長さんは1本の数式で言い切ります。経済的自由とは「生活費<資産所得」の状態だ、と。お金持ちでも高収入でもなく、毎月の生活費を不労所得が上回った瞬間に、人は働くかどうかを自分で選べるようになります。
私が驚いたのは、この本がほとんど感情論を語らないことです。語るのは社会保険制度と税制という「ルール」だけ。そのルールを正しく使えば、満足度を下げずにお金は貯まり、増えていく。お金の話が苦手な人ほど、この合理性に救われるはずです。

こんな人におすすめ
- 将来のお金が漠然と不安だが、何から手をつければいいか分からない人
- 節約=我慢だと思っていて、続かずに挫折してきた人
- 保険・マイホーム・車について、なんとなくの常識で判断してきた人
- 投資を始めたいが、その前に何を準備すべきか知りたい人
この本の核心――お金にまつわる「5つの力」を全部鍛える
本書のゴールは経済的自由、つまり「生活費<資産所得」の状態です。
「経済的自由というのは、『生活費<資産所得』という状態や。」
そこへ至る道は1本しかない、と著者は言います。お金にまつわる5つの力を、バランスよく鍛えること。
5つの力とは、貯める(支出を減らす)、稼ぐ(収入を増やす)、増やす(資産を増やす)、守る(資産を減らさない)、使う(人生を豊かにする)。この5つです。1つでも欠けると、自由は遠のきます。
面白いのは順番です。多くの人はいきなり「増やす(投資)」に飛びつきますが、本書は逆を勧めます。最初に鍛えるべきは「貯める力」。理由は単純で、即効性があり、効果が一生続き、誰でもできるからです。今日の行動で確実に成果が出るのは、貯める力だけなんです。
ではここから、5つの力を順に見ていきます。
貯める力――人生の「6大固定費」を上から叩く
貯める力とは、我慢ではありません。
「貯める力とは『生活の満足度を下げずに支出を減らす力』や!」
電気をこまめに消したり、遠くのスーパーへ安い卵を買いに行ったり。そういう「変動費のこまめな節約」は効率が悪い。精神的に疲れるうえ、効果も小さいからです。
代わりに狙うのは、金額が大きく、一度見直せば効果が一生続く「固定費」。本書はこれを人生の6大固定費と呼びます。通信費・光熱費・保険・家・車・税金の6つです。
通信費なら、大手キャリアから格安SIMへの乗り換えで月約5,000円。光熱費は電力会社をネットで比較して乗り換える。この2つは、今日中に手続きできます。
保険は「3つ」だけでいい
固定費の中でも、本書が最も大胆に切り込むのが保険です。
「保険というのは、言わば『不幸が起きること』に賭けたギャンブルみたいなもんや。」
日本の社会保険は世界最強クラス。高額療養費制度があるので、一般的な収入の人なら医療費の自己負担は月10万円程度で頭打ちになります。傷病手当金は、働けなくなっても直近1年の平均月収の約3分の2を最長1年6ヶ月支給してくれます。遺族年金も障害年金もある。
だから、判断基準はこうなります。起きる確率は超低いが、起きたら損失が超大きいこと。そこだけを民間保険でカバーする。具体的に必要なのは、掛け捨ての死亡保険(守るべき家族がいる場合のみ)・火災保険・自動車保険(対人対物無制限)の3つだけ。
数字で見ると説得力が増します。40歳男性が死亡する確率は0.1%、自動車事故で人を死なせてしまう確率は0.0039%。確率は低いが、起きれば賠償は5億円を超える判例もある。だから自動車保険は要る。逆に、発生確率が高く損失が限定的な病気は、貯金で備えるのが原則です。
マイホームと車は「リセールバリュー」で見る
家については、「マイホームは一生の資産」という常識を本書はひっくり返します。新築は買った瞬間に手数料や消費税で2〜3割の価値が消え、建物の価値はいずれゼロになる。だから判断軸はリセールバリュー、つまり売るときいくらで売れるか。
「『建物』の価値はゼロになるんやから、つまりリセールバリューが高くなるマイホームというのは、『良い土地に建っているマイホーム』のことになるんや。」
人口減少が続く日本で、買った値段より高く売れる物件を見抜くのは至難の業。だから出費を抑えたい人の王道は賃貸だ、というのが著者の立場です。
車も同じ発想です。50年所有すれば生涯維持費は約4,000万円。「必要なもの(消費)」と「欲しい物(浪費)」を混同せず、どうしても要るならリセールバリューの高い中古車を一括で買う。これが鉄則です。
稼ぐ力――「給与所得」と「事業所得」の2本柱を持つ
支出を絞ったら、次は入口を広げます。
貯める力には限界があります。自由までのスピードを上げるには、収入のパイそのものを増やすしかない。本書が勧めるのは、転職で給与所得を安定させながら、副業で事業所得を育てる「2本柱」戦略です。
事業所得には、給与所得にはない3つの節税メリットがあります。かかった費用を経費にできること、青色申告特別控除が使えること、そして社会保険料の負担を抑えられること。サラリーマンが給与天引きで節税できないと諦めるのは早い。副業を持てば、税のルールを味方につけられるんです。
副業がフロー型かストック型かも意識します。せどりやウーバーイーツは働けば即お金になるが、やめれば収入も止まるフロー型。ブログやYouTubeは収益化に時間がかかるが、自分が働かなくても回り続けるストック型。まずはフロー型で「自分の力で稼ぐ」感覚を掴み、徐々にストック型へ移すのが王道です。
会社にバレないか不安な人へ。副業バレの原因は、住民税の通知が会社に届くことです。確定申告で住民税を「自分で納付(普通徴収)」にチェックすれば、正しくやれば99.99%バレません。
増やす力――投資の前に「生活防衛資金」と「相場観」
ここでようやく投資の話になります。ただ、本書は投資を始める前に2つの条件を課します。
1つは生活防衛資金。病気やリストラに備え、会社員なら生活費の半年分、フリーランスなら1年分を現金で確保する。これがないと、暴落時に怖くなって底値で売る「狼狽売り」をしてしまうからです。
「投資は生活防衛資金が貯まるまでやっちゃダメ?」
もう1つは相場観。一般的な投資の利回りは年利5〜7%、世界最高の投資家ウォーレン・バフェット氏でさえ年利22%程度。これを大きく超える「月利5%」「元本保証で高利回り」は、ほぼ詐欺です。100年以上前にチャールズ・ポンジが考案したポンジ・スキームは、今も世界中の詐欺師に使われ続けています。相場を知らずに投資を始めれば、ほぼ100%騙される、と著者は警告します。
守る力・使う力――貯めて増やした先にあるもの
残る2つの力も、自由には欠かせません。
守る力は、せっかく築いた資産を減らさない力です。詐欺やぼったくり、不要な手数料、無駄な納税を避ける。リボ払いのような「金利を敵に回す」行為を絶対にしない。攻めて増やすより、漏れを止めるほうが簡単なこともあります。
使う力は、お金を人生の豊かさに変える力です。満足度の高い自己投資、大切な人へのプレゼント、寄付。本書が貫くのは、お金を増やすこと自体は目的ではない、という姿勢です。
「人生は、時間そのものです。」
経済的自由のゴールは、大金ではなく「働くかどうかを自分で選べる時間」を取り戻すこと。だから貯めて稼いで増やして守るのは、最後に上手に使うためなんです。
明日から何を変えるか
本書の実践は、順番が命です。難易度の低いものから、確実に積み上げます。
1. 通信と光熱費を、今週中に乗り換える 格安SIMへのMNPと、電力会社の比較・乗り換え。これだけで月数千円が一生浮きます。違約金が出ても、数ヶ月で元が取れることがほとんどなので、迷わず動いてOKです。
2. 保険を「3つ」まで絞り、税金を最適化する 加入中の保険を全部書き出し、死亡(家族がいる場合)・火災・自動車(対人対物)以外を解約候補にする。並行して、ふるさと納税を限度額まで使い、医療費控除や扶養控除も申告する。
3. メルカリで不用品を1つ売ってみる 稼ぐ力の第一歩は、いきなり大きな副業ではなく、家にある不用品を1点出品すること。自分の力でお金を生む感覚が掴めたら、生活費の半年分を生活防衛資金として貯め、そこからインデックス投資を学び始めます。
おわりに
私がこの本に感じた一番の価値は、お金の話を「不安という感情」から「確率と数字」へ引きずり出してくれたことです。
保険も家も車も投資も、なんとなくの常識で選べば搾取される。でもルールを知れば、満足度を下げずに自由へ近づける。著者の言葉を借りれば「今日が、人生で一番若い日」です。5つの力のうち、まずは今日できる「貯める力」から、1つだけ動かしてみてください。
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