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『ノイズに振り回されない情報活用力』鈴木進介さん|情報は集めるほど、答えから遠ざかる

学習・インプット
約4分で読めます

「とりあえず検索しておこう」。この口癖、何回つぶやいたか覚えていません。

調べて、ブックマークして、いつか使うかもとフォルダに放り込む。なのに、いざ何か決めようとすると頭の中はぐちゃぐちゃで、結局決められない。

鈴木進介さんの『ノイズに振り回されない情報活用力』を読んで、その理由がうっすら見えてきました。情報を集めれば集めるほど、私は答えから遠ざかっていたのかもしれない。本書が突きつけるのは、シンプルな逆説です。成果を出す人の頭はシンプルで、価値があるのは抱え込んだ情報のうちごく一部だけ。本書は、その「残すべき少数」を見極めるための引き算の技術をまとめています。

こんな人におすすめ

どの本にも当てはまる「情報に悩む人」ではなく、こういう場面に心当たりがある人に効く本だと思います。

3つとも、原因は「集める力」ではなく「捨てる力」の不足。本書はそこを正面から扱います。

情報は「足す」のではなく「削る」

まず核心から。著者の主張は「より少ない情報にこそ価値がある」という一点に尽きます。

私たちはつい、情報量が多いほど良い判断ができると思い込んでいます。でも著者は、玉石混交の情報をそのまま抱え込むと、本質が埋もれて見えなくなると言う。ここで使われる比喩が見事でした。

彫刻家ミケランジェロは、ダビデ像をつくるとき粘土を足したのではなく、大理石の不要な部分を削り取った。

(鈴木進介『ノイズに振り回されない情報活用力』より、趣旨を要約)

本質は「足す」ではなく「削る」ことで現れる――この引き算の発想が、本書を貫く背骨です。情報を貯め込むことで安心していた自分には、なかなか痛いところを突かれた感覚でした。

そして著者は、情報の扱いを「インプット・整理・アウトプット」の3ステップに分け、各段階にフィルターを置いてノイズを削り落としていく、という全体像を描きます。頭文字をとった呼び名がついているのですが、それは本書で確かめてください。ここでは、その骨格だけ紹介して、あとは原著に預けます。

「とりあえず検索」が、なぜ時間を奪うのか

本書がまず解剖するのは、ノイズの正体です。ノイズとは「余分で価値がない情報」のこと。目的や仮説から外れた情報や、感情的に装飾された大げさな表現を指します。

厄介なのは、私たちが無意識にノイズを増やしている点です。「とりあえず検索」「いつか使うかも」で集めた情報は、結局ほとんど使われない。それどころか、後から見返す手間を生む負債になる。

ここで著者が、成果の大半はごく一部の重要な情報から生まれる、という有名な法則を持ち出します。具体的な比率は本書の中で確かめてほしいのですが、要は「重要な少数を残し、残りは思い切って捨てよ」という提案です。

捨てるのは怖い。でも、抱え込んだまま埋もれさせるほうが、よほど成果を遠ざける。この章は、そのことを丁寧に納得させてくれます。

数ある手法のうち、私に一番効いた一つ

ここからが実践編で、本書にはインプット・整理・アウトプットそれぞれにいくつもの具体策が並びます。検索時に不要語を除外する工夫、情報を一晩寝かせてから見極める作法、伝える型の使い分け、情報を意図的に断つ習慣――どれも試したくなるのですが、ここで全部並べると本書を読む楽しみを奪ってしまう。

なので、私の頭をいちばんひっくり返した一つだけ書きます。「出口を先に決める」という原則です。

アウトプット(出口)の目的や形式を先に決めてから、それに合う情報だけを集める。普通は逆ですよね。集めてから「さて何に使おう」と考える。でもそれだと何でも拾ってしまい、ノイズだらけになる。先に出口を決めれば、必要な情報の輪郭がはっきりして迷子にならない。仮説を立てずに「とりあえず検索」すると画面に振り回されるが、仮説があれば検索は「答え合わせ」になる――同じ検索でも、頭の使い方がまるで変わるという指摘には素直にうなりました。

整理やアウトプットの段階にも、視点を切り替える道具や、伝える内容を中心の一本に絞り込む発想が用意されています。ただ、その具体的な型や手順は、本書で順を追って読んだほうがずっと腑に落ちます。気になった方は原著で確かめてください。

強みと限界――この本が向く場面、向かない場面

最後に、本書の射程を正直に書いておきます。著者自身が前提を限定しているからです。

強みは、抽象的な情報術を日常のエピソードと比喩で説明している点。休日の外食先の検索、物件探しでの気づき、ダビデ像。だから直感的に頭に入ります。

一方で限界もあります。本書のメソッドは「すでに存在する情報から、有益な部分を抽出・整理する」ことに特化している。だから、まったくのゼロから新しいアイデアを発散・拡散させるアプローチへの言及は限定的です。

また本書は2022年の出版で、フェイクニュースや情報の錯綜を背景にしている。情報の「信ぴょう性」を疑う視点は、今もそのまま使えます。つまりこの本は、「集めた情報を、いかにシンプルに使うか」で困っている人に最も効きます。

おわりに

読み終えて、自分の中で変わったことが1つあります。情報を「どれだけ集めたか」で安心するのをやめようと思いました。

これからは「何を捨てたか」で自分を測ってみる。フォルダがパンパンに膨らんでいるのは、有能の証ではなく、決められていない証拠かもしれない。

ダビデ像は、大理石を削ったから現れました。あなたの答えも、たぶん同じ場所にある。集めるのをやめて、削り始めたとき、初めて見えてくる――その削り方の手つきは、ぜひ本書で受け取ってください。


合わせて読みたい

『アウトプット思考』内田和成さん 本書の「出入口の法則」と同じく、情報収集が現実逃避になりやすいと指摘する一冊。アウトプットを起点に情報を絞る発想をさらに深掘りしたい人に。

「情報が足りない」は、決断したくないだけ 本書が言う「集めるほど決められなくなる」現象を、決断という角度から短く突いたコラム。情報断食を始める前の背中押しに読みたい。

『調べる技術 書く技術』佐藤優さん 情報を「捨てて整理する」本書に対し、こちらは「集めて知性に変える」技術。インプットとアウトプットの両輪をそろえたい人におすすめ。


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