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『目的ドリブンの思考法』望月安迪さん|「何のために」を忘れた仕事は成果ゼロ

思考法・問題解決
約4分で読めます
『目的ドリブンの思考法』

毎日きちんと働いている。タスクもこなしている。なのに、評価も成果もついてこない。

この本は、その理由を最初の数ページで突きつけてきます。

「仕事で失敗したければ、目的を忘れ去ってやればいい」

『目的ドリブンの思考法』は、デロイト トーマツ コンサルティングのシニアマネジャー、望月安迪さんによる一冊。変化が激しく先の読めない時代に、最小の労力で最大の成果を出すための「思考の型」を体系化した本です。

私がこの本を手に取ったのは、まさに「忙しいのに手応えがない」という感覚に心当たりがあったから。読み終えて感じたのは、これは小手先のタスク管理術ではなく、仕事の出発点そのものを問い直す本だということでした。

「業務の完了」と「成果」は、まったくの別物だ

本書の核心は驚くほどシンプルです。成果とは「業務の完了」ではなく「目的の達成」と等しい。だから仕事は「何を(What)」ではなく「何のために(Why)」から始めなければならない――。

タスクを大量にこなしても、それが目的に貢献していなければ成果はゼロ。言われてみれば当たり前なのに、日々の現場ではこの当たり前がいちばん抜け落ちます。「やること」に追われるうち、いつの間にか手段そのものが目的にすり替わっていく。あの感覚を、本書は「手段の目的化」と名指しして容赦なく突いてきます。

ここが効くのは、忙しさで自分を慰めてきた人にこそ、です。私はこの一節を読んで、「量で自分を評価する癖」がいかに楽な逃げ場だったかを思い知らされました。厳しい指摘ですが、無駄な努力から人を解放してくれる視点でもあります。

なぜ「逆算」でなければ間に合わないのか

本書が前提に置くのは、変動的で不確実、複雑で曖昧な――いわゆるVUCAの時代背景です。10年先が読めない世界では、過去を参照して未来を考えるやり方が通用しなくなる。前例踏襲や改善の積み上げでは、変化に置いていかれてしまう。

そこで著者が掲げるのがバックキャスト思考です。まず「望む未来(目的)」を描き、そこから現在へ逆算して、いま何をすべきかを決める。未来は予測するものではなく、目的として先に決め、自分で創りにいくもの――この姿勢が本書全体を貫く通奏低音になっています。

「目的地を知らない船乗りに、追い風を捉えることはできない」

向かう先が定まっていなければ、どんな好機が来ても活かせない。シンプルですが、刺さる一行です。

〈目的→目標→手段〉という、たった一本の背骨

抽象的な目的だけでは人は動けません。そこで本書は、目的を具体的な「目標」に変換し、さらに目標を「手段」へと分解する三層の構造を土台に据えます。

「健康な身体を取り戻す」が目的なら、「睡眠を最低7時間確保する」が目標、「寝る前にスマホを触らない」が手段。この縦の一貫性が崩れた瞬間に、手段の目的化が始まります。逆に言えば、自分の仕事をこの三行で書けるかどうかが、迷子になっていないかの試金石になる。私はこの「三行テスト」が本書から得た最大の実用ツールだと思っています。

仕事を回す「5つの基本動作」――その入口だけ

本書がうまいのは、ここから先を抽象論で終わらせない点です。手段を実際に機能させるために、職種を問わず使える型として「認知・判断・行動・予測・学習」という5つの基本動作を用意しています。

ここでは入口として、最初の「認知」だけ紹介します。認知とは、解くべき「正しい問題」を見極めること。

「Right Issue(正しい問題)を見極めれば Right Process(正しい対処)は後からついてくる」

問題とは、目指す姿と現状の「ギャップ」のこと。だから目標がなければ問題も定義できない、という整理がここで効いてきます。アインシュタインが「人生を変える問題を解くのに1時間あれば、55分は正しい問いの確認に使う」と語ったという逸話も添えられ、いかに私たちが「問いを疑う」前に走り出しているかを思い知らされます。

残る「判断・行動・予測・学習」には、それぞれ独特の切れ味があります。とりわけ私が唸ったのは「学習」のパートで、トヨタ生産方式がアメリカのスーパーマーケットの観察から生まれた話を起点に、まったく別の領域をつなぐ発想が展開されます。リスクを「目的の影」と捉える予測の章も含め、その続きはぜひ本書で確かめてみてください。一つひとつの動作に、現場で試したくなる仕掛けが仕込まれています。

どんな人に、どう効くか

この本が刺さるのは、「忙しさ」と「成果」を別物だと言い切ってくれるからです。

努力の量で自分を測ってきたプレイヤーには、空回りの正体を突きつける鏡になる。プレイヤーから昇格したばかりのリーダーには、チームを「何を・どうやって」ではなく「何のために」で動かす言葉を授けてくれる。一方で、前例の積み上げで安定して回る業務だけを担う人や、目的論より作業の時短テクだけを手早く知りたい人には、やや回りくどく感じるかもしれません。

読後に残るのは、手を動かす前に一度だけ「これは何のためか」と問い直す――その小さな習慣です。たったそれだけのことが、努力を成果に変える分かれ道になる。本書を閉じたあと、自分の仕事を例の「三行」で書けるかどうか、試してみてほしいと思います。


合わせて読みたい

『論点思考』内田和成さん 本書の「認知」――正しい問題(Right Issue)を見極める――を、もっと深く掘り下げた一冊。「正しい答えの前に正しい問いがある」という主張が、目的ドリブンの土台と重なります。

『問題解決 ビジネスパーソン必須の仕事術』高田貴久さん 「思いつきの対策」を捨てて、ギャップから真因をたどる手順を実務目線で解説。本書の5つの基本動作を、より具体的なステップで補完してくれます。

目標は戦略ではない。 「目標」と「目的・戦略」を混同する罠を扱ったコラム。本書の三層ピラミッドが、なぜ目標止まりではダメなのかを、短く鋭く確認できます。


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