上司に言われた通りにやった。
資料も作った。期限も守った。
完璧に仕事をこなしたはずなのに、評価は「普通」。
なぜ。
細谷功さんの『仕事に生かす地頭力』を読んで、その理由がわかりました。
「言われたこと」をやっていたからです。
言われたことしかやらない人は、いくら完璧にやっても「言われた人の代わり」にすぎない。
評価されるのは、言われていないことまで考えられる人でした。
「Why」がない仕事は、すべて無駄になる
本書の核心は、「問題解決ピラミッド」というフレームワークです。
あらゆる仕事は、3つの階層で構成されています。
- Why:なぜやるのか(目的・背景)
- What:何をやるのか(課題・テーマ)
- How:どうやるのか(具体的な手段)
多くの人が陥る罠があります。
上司から「この資料を作って」と言われると、すぐに「どう作るか(How)」を考え始める。
でも、その資料を作る目的(Why)を確認していない。
結果、完璧な資料ができても「いや、そういうことじゃなくて…」と言われる。
これを著者は「WhyなきWhat病」と呼んでいます。
目的を見失ったまま、手段をこなすことが目的になってしまう病です。
「押し返す」ができる人が評価される
衝撃的な概念がありました。
「押し返す」という考え方です。
たとえば、顧客から「このソフトウェアを導入したい」と言われたとします。
普通の担当者は、すぐにソフトウェアの説明を始める。
でも、優れた担当者は違います。
「ちなみに、このソフトウェアで何を実現したいのですか?」と聞き返す。
つまり、顧客が出してきた「What(ソフトウェア導入)」を、一度「Why(目的)」に押し返すのです。
すると、「業務効率を上げたい」という真の目的が見えてくる。
そうなれば、ソフトウェア以外の選択肢も提案できます。
「押し返す」ことで、選択肢が広がる。
言われたことをそのままやる人は、選択肢が一つしかない。
目的まで遡って考える人は、選択肢が無数に生まれる。
どちらが価値を生むかは明白です。
「カフェテリアの法則」で全体を見る
本書で印象的だったのが、「カフェテリアの法則」という比喩です。
ビュッフェ形式のカフェテリアで、料理を取るとき。
目の前のサラダが美味しそうだと、つい最初にたくさん取ってしまう。
でも、奥に進むともっと魅力的なメインディッシュがある。
すでに皿がいっぱいで、取れない。
これがビジネスでも起きています。
最初に目についたタスクから着手してしまう。
全体を見ずに、目の前の仕事に飛びつく。
結果、本当に重要な仕事に手が回らない。
著者が提唱するのは、「全体から考える」という原則です。
まず全体像を把握してから、優先順位をつける。
目の前のタスクに飛びつく前に、一歩引いて俯瞰する。
これが「地頭力」の基本でした。
「満足度の方程式」を知っているか
もう一つ、刺さった話があります。
「満足度 = 結果 - 期待値」という公式です。
たとえば、80点の成果を出したとします。
相手の期待値が70点なら、満足度は「+10」。
相手の期待値が90点なら、満足度は「-10」。
同じ80点でも、評価が真逆になる。
多くの人は「結果」を上げることに99%のエネルギーを注ぎます。
でも、「期待値」をマネジメントすることを忘れている。
著者は、プロジェクト開始時に必ず関係者の期待値を確認することを推奨しています。
「この仕事の成功とは、どういう状態を指しますか?」
この質問をするかどうかで、評価は大きく変わります。
期待値を把握していれば、ズレを事前に修正できる。
「言われた通りにやったのに…」という悲劇は、期待値を確認しなかったことが原因かもしれません。
「結論から考える」の本当の意味
「結論から話せ」はよく聞きます。
でも、本書が言う「結論から考える」は、もう一段深い話でした。
プロジェクトを始める前に、最終報告書の目次を作れ。
これが著者の提案です。
最終的に何をアウトプットするのか。
それを最初に決めておけば、そこから逆算して必要な作業が見える。
「とりあえず調べ始める」「とりあえず手を動かす」は、カフェテリアで目の前の料理に飛びつくのと同じ。
ゴールを先に置いてから、そこに向かう道筋を設計する。
これが「結論から考える」の本当の意味でした。
こんな人に読んでほしい
- 「言われたことはやったのに」と評価に不満がある人
- 仕事が忙しいのに、成果が出ない人
- 「地頭がいい」と言われる人の思考法を知りたい人
- フレームワークを使いこなしたい人
この本が教えてくれるのは、「もっと頑張れ」ではありません。
「考える順番を変えろ」。
How(どうやるか)から考えるのをやめる。
Why(なぜやるか)から始める。
全体を見てから、部分に着手する。
この順番を変えるだけで、同じ努力量でも成果が変わります。
「地頭力」は才能ではありません。
思考の「型」です。
型を知っているかどうかで、仕事の質は決まります。
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『具体と抽象』細谷功 同じ著者の代表作。「Why」と「How」の階層移動をさらに深く理解したい人に。抽象と具体を自在に行き来する思考法が学べます。
『ゼロ秒思考』赤羽雄二 「結論から考える」を習慣化したい人に。A4メモ書きで思考の瞬発力を鍛える方法が学べます。
『外資系コンサルの知的生産術』山口周 問題解決のフレームワークをさらに実践したい人に。思考技術を成果に変える方法が学べます。