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『超トーク力 心を操る話し方の科学』メンタリストDaiGo|口下手のままで、相手の心をつかむ方法

コミュニケーション・文章術

話すのが苦手。沈黙が怖い。初対面の人と何を話していいかわからない。

こういう悩みを持っている人に、「場数を踏め」「もっと明るく振る舞え」というアドバイスは何の役にも立ちません。メンタリストDaiGo氏自身、子どもの頃から会話にコンプレックスを抱えていた人物です。本書は、その苦手意識を「科学」の力で克服してきた著者が、ハーバード大学やシカゴ大学の心理学研究に基づいて体系化した「再現性のある会話術」をまとめた一冊です。

本書の核心は、「上手に話す」ことを目指さないという逆説にあります。流暢に話す必要はない。面白いネタを用意する必要もない。やるべきことは、相手の感情を引き出し、良き聞き手になること。それだけで人間関係は劇的に変わると著者は断言しています。

こんな人に読んでほしい

1on1で部下が何を考えているかわからないマネージャー。飲み会や懇親会で壁の花になってしまう人。プレゼンや商談で言いたいことが相手に伝わらない営業パーソン。「コミュ力がない」と自覚しているすべての人。

雑談で大事なのは「ネタ」ではなく「感情」

本書が最初にひっくり返すのは、「雑談には面白いネタが必要」という思い込みです。

カナダのウィンザー大学の研究チームが、オフィスのウォータークーラー付近で雑談する人としない人を比較したところ、雑談する人は好感度だけでなく能力評価まで高く、重要プロジェクトへの採用率も上がっていました。ただしここで重要なのは、雑談の「内容」ではなかったという点です。

ダニエル・カーネマン博士のピーク・エンド・セオリーによれば、人が記憶するのは会話の中身ではなく、最も感情が動いた瞬間(ピーク)と別れ際の印象(エンド)だけ。つまり、雑談で目指すべきは「いいネタを話す」ことではなく、「いい雰囲気でやり取りできた」という印象を残すことです。

そのために著者が推奨するのが「トゥー・クエスチョン・テクニック」。まず相手の最近の出来事を聞く。次に「それでどんな気持ちになりましたか?」と感情を尋ねる。この2段階の質問だけで、相手の脳には「美味しい食事」と同等の快感が生まれるとハーバード大学の実験で明らかになっています。

ちなみに、300人を対象にした実験で最も会話が盛り上がった「会話スターター」第1位は、「今日、何かいいことありました?」というシンプルな一言でした。気の利いた質問は必要ありません。相手の感情にアクセスする入口を開けるだけでいい。

説得力は「物語」で10倍になる

ビジネスの場面で「言いたいことが伝わらない」と悩む人に、著者はストーリーテリングの技術を勧めています。

人間の脳は情報を物語として処理・記憶しやすい性質を持っています。データや事実を羅列するより、物語に変換して伝えたほうが、聞き手の記憶に長く残ります。しかも重要なのは、目の前の相手だけでなく「その先にいるキーマン」にも伝わる形にすること。担当者が社内に持ち帰ったとき、上司に話しやすい形で伝えておく必要があるわけです。

そこで使うのが「CARフレームワーク」。P&Gのコミュニケーション研究所所長ポール・スミス氏が提唱した型で、C(Context=文脈・背景)、A(Action=浮き沈みのある展開)、R(Result=結論・まとめ)の3要素で話を組み立てます。

NETFLIXの創業者リード・ヘイスティングスの例がわかりやすい。彼はレンタルビデオ店で40ドルの延滞料金を請求されて腹が立った(C)。「延滞金がかからないビデオ屋を作ろう」と動き出したが技術的な壁にぶつかった(A)。最終的にネット配信型のサブスクリプションモデルにたどり着いた(R)。この「上げて、下げて、また上げる」構成が、聞き手の感情を揺さぶり、記憶に刻む力を持っています。

もう一つ重要なのが声のコントロールです。新しい情報を伝えるときは高い声で早口に、覚えてほしいポイントは低い声でゆっくり話す。このメリハリが説得力を決定的に変えます。

「内面の静けさ」が会話の土台になる

本書で最も意外だったのは、会話テクニックの前に「メンタル」を整えることが不可欠だという主張です。

トーマス・ジェファーソン大学の脳神経学者アンドリュー・ニューバーグ博士の研究チームが、信頼関係が増すコミュニケーションについて調査した結果、話し方の技術よりも先に必要なのは「内面の静けさ」だと結論づけました。

会話中に「嫌われているかもしれない」「つまらないと思われているかも」という不安が湧く。これを著者は「インナースピーチ」(心の中の自己批判的な声)と呼んでいます。このインナースピーチに囚われると、目の前の相手に集中できなくなり、結果として本当に悪印象を与えてしまう。

対策として著者が勧めるのが、毎朝の「インナースピーチ観察」。頭に浮かんだネガティブな感情を紙に書き出し、ポジティブな解釈に書き換える。たとえば「会社行くのいやだな」を「休むという手もある。人生は自由だ」に変換する。これを習慣化することで、会話中の不安が激減するそうです。

さらに実践的なトレーニングとして、テレビドラマをミュート(無音)で見て登場人物の感情を想像する「無音ドラマトレーニング」や、苦手な相手が座っていると想定して椅子に向かって話す「空席エクササイズ」も紹介されています。共感力は、一人の部屋でも鍛えられるのです。

実践アクション:今日から始める3ステップ

1. 会話の割合を「相手6:自分4」にする

著者はこれを「ピンポンルール」と呼んでいます。意識し始めの頃は「相手8:自分2」の感覚で取り組むと、客観的にはちょうど6対4になるそうです。自分が連続して話すのは30秒以内(信号機ルール)。そして相手が話し終わったら、すぐに話し出さず1秒だけ間を置く(一時停止ルール)。よくある失敗は、相手の話が終わる前に自分の意見を被せてしまうこと。1秒の間が「この人はちゃんと聞いてくれている」という安心感を生みます。

2. 「会話スターター」を3つストックしておく

「今日、何かいいことありました?」「最近ハマっていることはありますか?」「子どもの頃の夢は何でしたか?」。科学的に効果が証明されたこうした質問を3つスマホにメモしておくだけで、沈黙への恐怖が消えます。よくある失敗は、天気や交通手段の話で終わってしまうこと。相手の「感情」にアクセスできる質問を選んでください。

3. 自分の「失敗談」を1つ用意しておく

深い人間関係を築くには自己開示が不可欠です。「実はプレゼンで頭が真っ白になったことがある」「入社当初は電話が怖くて逃げていた」など、自分の弱さを見せるストーリーを1つ準備しておく。よくある失敗は、自慢話から入ってしまうこと。先に弱さを見せた人に対して、相手も心を開きやすくなります。これが「返報性の原理」です。

おわりに

ギャラップ社の500万人を対象にした調査によれば、職場に信頼できる友人が3人いるだけで、人生の満足度は96%上昇し、給料への満足度は200%高まります。人間関係の質は、人生の質そのものです。

そして本書が繰り返し伝えているのは、その人間関係を変える力は「才能」ではなく「科学的なルール」の中にあるということ。口下手でも、人見知りでも、今の性格のままでいい。ルールを知り、少し練習するだけで、人との関わり方は確実に変わっていきます。


合わせて読みたい

『神トーーク』星渉|論理的に正しくても、人は動かない 「伝える」側の技術にフォーカスした一冊。本書の「良い聞き手になる」アプローチと組み合わせることで、聴くと伝えるの両輪が揃います。

『超一流の会話力』渡部建|「会話は、話してはいけない」という逆説 「話さないほうが好かれる」という本書と共通するテーマを、芸能界の最前線で実践してきた著者の視点から展開。聞き手に徹する技術の実例が豊富です。

『世界最高の話し方』岡本純子|話し方は才能じゃない、何歳からでも変えられるスキルだ 本書と同じく「話し方はスキルである」という前提に立ちながら、グローバルなビジネスシーンでの実践例を多く収録。日本人特有のコミュニケーション課題にも切り込んでいます。


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